第234話 絶賛スランプ中だけど…
札幌ホワイトベアーズとのホーム三連戦は1勝1敗で3戦目を迎えた。
僕は初戦、9番ショートでスタメン出場したが、3打数ノーヒット。
そして翌日は代走で途中出場し、守備についた後、打順が回ってきたが、三振に倒れてしまった。
これで直近3試合で8打数ノーヒット。
94打数26安打で打率も、.276まで下がってしまった。
そして3試合目は出場機会は無かった。
僕はこの3日間、早く球場に入り、バッティング練習(いわゆる早出特打)をしたが、何故かしっくりこない。
うーん、スランプかもしれない。
仙台でのホームランが良い当たり過ぎて、無意識に大きな当たりを狙いに行ってしまっているのかもしれない。
僕の売りはコンパクトなスイングである。
もう一度、原点に立ち返らなければ。
札幌ホワイトベアーズとの三連戦は1勝2敗と負け越し、一日置いて京都での京阪ジャガーズ三連戦が控えている。
ローテーションの順番で行くと、山崎は第3戦目で先発予定だ。
山崎は昨年末の契約更改で、今シーズンも昨シーズン(15勝)並の活躍をしたら、ポスティングによる大リーグ挑戦を認めると、球団と約束したらしい。
そのせいか、現時点で8勝1敗、防御率1.57と昨年を上回るペースで勝ちを重ねている。
山崎と日本で勝負できるのも今季限りとなるだろう。
京阪ジャガーズとの三連戦の初戦。
相手が右腕の若狭投手とあって、僕はベンチスタートだった。
若狭投手は40歳近いベテランであるが、見た目は若い。
名前の通り、若さを保っている。
僕はベンチでそんなくだらないことを考えていた。
この日は若狭投手の老獪なピッチングの前に、打線は5回までわずか一安打に抑えられていた。
そして投手陣は先発の丸山投手が2回ももたずにノックアウトされるなど、5回までに何と11失点と典型的なワンサイドゲームになっていた。
僕は6回の守備から、ショートの守備についた。
今日のショートの先発は伊勢原選手だったが、初回に失点に絡むエラーをし、打っても2打数2三振と精彩を欠いていた。
8回に打席が回ってきたが、チェンジアップを振らされて三振してしまった。
これで9打数連続ノーヒット。
打率も絶賛急降下中である。
翌日の試合は相手先発が左腕だったにも関わらず、ベンチスタートだった。
そして8回に代走で出たが、打席は回ってこなかった。
チームも負け、これで交流戦に入って1勝4敗となった。
中京パールスとの差を縮めるどころか、差が開いてしまった。
明日は山崎が先発。
厳しい戦いになることは明らかだ。
僕はたこ焼きとウィスキーの山崎のミニボトル、そして炭酸水を買ってホテルに帰った。
験担ぎして不振からの脱却を図りたいという算段だ。
(野球用語で凡退のことをタコという。相手ピッチャーに骨抜きにされた、というのが語源らしい)
翌日の試合前ミーティングで、1番ショートでのスタメンを告げられた。
僕はスランプ中だが、相手が勝手知ったる山崎ということでの起用だろう。
京阪ジャガーズとの試合時には、山崎から僕に話に来るのが恒例だが、今回は来なかった。
試合前練習で遠くから姿を見たが、かって見たことがないくらい真剣な表情をしていた。
恐らく今日が僕と日本での最後の対戦となる。
それもあって気合が入っているのだろう。
今日のスタメンは以下の通り。
1 高橋隆(ショート)
2 伊勢原(セカンド)
3 岸(センター)
4 岡村(ファースト)
5 デュラン(レフト)
6 水谷(サード)
7 宮前(ライト)
8 高台(キャッチャー)
9 児島(ピッチャー)
山崎にエースの児島投手をぶつける。
負けられない一戦だ。
僕は試合前にマウンドで投球練習をしている山崎の姿を見て、闘志をたぎらせていた。
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