第149話 ドラフト同期達の近況など
チームはここまで21試合を終えて、12勝9敗の2位につけていた。
僕は8試合に出場し、10打数3安打の打率.300、ホームランと打点は0。
四死球2、盗塁2(盗塁死1)
三塁打1、二塁打1
出場機会は多くないが、悪くないスタートだと思う。
今日対戦する古巣の静岡オーシャンズは、ここまで7勝14敗で最下位に沈んでいた。
今季は開幕から谷口を4番に据えており、谷口は開幕当初は好調だったが、段々と調子を落とし、それに合わせるようにチームも負けが増えていた。
谷口はここまで21試合に出場して、打率.222、ホームラン4本、打点15。
またエースの杉澤さんは、昨年の不調を引きずるように、シーズン初登板は4回5失点と炎上し、ローティシヨンを1回飛ばし、中継ぎ登板を1回挟んで先発した、前回登板も3回4失点で降板していた。
ここまで3試合に登板して、0勝2敗、防御率8.10
先日、登録を抹消された。
原谷さんはここまで5試合に出場して、打率.200、ホームラン1本とあまり出場機会に恵まれていない。
そして川崎ライツの竹下さんはここまで1軍出場なしであった。
僕らのドラフトの時、12球団一の成功ドラフトと言われたが、6年目になり、その評価は微妙なものになりつつある。
何とか盛り返したいものだ。
今日の試合、静岡オーシャンズの先発は、ベテランの車沢投手。
かってはエースだったが、故障もあり、最近はローティシヨンの谷間で投げることが多くなっていた。
そして今日の泉州ブラックスのスタメンに僕の名前があった。
1 高橋隆(ショート)
2 額賀(セカンド)
3 岸(センター)
4 岡村(ファースト)
5 デュラン(指名打者)
6 水谷(サード)
7 宮前(レフト)
8 高台(キャッチャー)
9 山形(ライト)
ピッチャー 綾瀬
今季初めて一番打者としての出場だ。
試合前の練習の後、栄ヘッドコーチに声をかけられた。
「分かっていると思うが、お前に期待しているのは出塁だ。
お前はとても嫌らしくなってきた。
相手チームにとっては厄介者だ。
これからも嫌らしさを発揮して、是非嫌われ者になってくれ。
ということで頼んだぞ」とポンと肩を叩いて、去って行った。
全く励まされた気がしないのは何故だろうか……。
1回の表、綾瀬選手は先頭の新井選手にいきなりツーベースヒットを打たれた。
何とかツーアウトまでこぎつけたもののランナー三塁で、迎えるバッターは谷口だ。
谷口は最近、13打席ノーヒットと苦しんでいる。
初球、内角を狙った綾瀬投手のカットボールが甘く入った。
谷口はこれを見逃さず、うまくおっつけ、三遊間に鋭いライナーを打った。
だがそこにいたのは名手、高橋。
誰もがレフト前に落ちると思った打球をジャンプ一番、掴み取った。
谷口は一塁ベース手前で宙を仰いでいる。
悪いな。俺も必死なものでね。
僕は軽やかな足取りで、大歓声の中、ベンチに戻った。
次は打撃でアピールだ。
車沢投手はかってエースだっただけあって、多彩な変化球を操る。
だが球速はそれ程でもないので、僕としてはバットには当てやすい。
1回の表は、9球粘ったが最後はフルカウントから見逃しの三振に倒れてしまった。
僕はボールだと思って見送ったが、審判がストライクを宣告した。
審判がストライクと言えば、それはストライクだし、怪しければファールを打てば良かった。
この打席は僕の未熟さが出てしまった。
結局、この回は三者凡退に終わり、2回表は綾瀬投手が三者凡退に抑えた。
そして2回裏に、岡村選手のソロホームランで1点を先制したが、3回の表に今度は新井選手のソロホームランで同点に追いつかれた。
3回裏は僕に打席が回ってくる。
ここまで打点が無いので、ランナーを置いて打席が回ってくることを期待したが、8番の高台選手、9番の山形選手が連続で三振し、ツーアウトランナーなしで僕に打席が回ってきた。
さすが車沢投手はベテランだ。
球威は全盛期ほどは無いが、老獪な配球で打者を打ちとっている。
僕が静岡オーシャンズに入団当初はバリバリのエースだったので、僕はほとんど話したことは無かったが、人的補助で移籍の時には餞別をくれた。
「いいか、ツーアウトだし、狙い球を絞って思い切り振り抜いて来い。
今の車沢の球威なら、お前のへっぴり腰でも外野の頭を越えることができるかもしれない」と釜谷バッティングコーチ。
温かい励ましの言葉を胸に、僕は打席に向かった。
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