第183話 天王山か天目山か

 翌日、トーマスは一軍の出場登録を抹消された。

 まだまだ代打など戦力になると思うが、本人が固辞した。

 引退する自分よりも若手にチャンスを与えてほしいということだ。

 

 泉州ブラックスは昨日の逆転勝ちの勢いそのままに静岡オーシャンズに対し、今日の試合も快勝した。

 僕は8回に代走で出場し、その後、守備についた。


 翌日も泉州ブラックスは接戦をものにし、静岡オーシャンズに対し、三連勝を果たした。

 この試合も僕はベンチスタートで、やはり途中から代走として出場した。


 その後も泉州ブラックス、東京チャリオッツは互いに譲らず、ついに0.5ゲーム差のまま最後の直接対決三連戦を迎えることになった。

 残り試合数は互いに5試合ずつ。


 もし三連敗したら即、終了であるし、1勝2敗でもかなり厳しくなる。

 つまりできれば三連勝、悪くても2勝1敗としなければならない。

 この三連戦。天王山となるか、天目山になるか。

 シーズン最大のヤマ場を迎えた。

(ちなみにヤホーで、調べたところ、天目山とは戦国時代に武田氏が滅亡した地ということだ)


 この大事な三連戦を泉州ブラックスは2つ落としてしまった……。

 これで2.5ゲーム差……。

 残り3試合であることを考えると、ほぼ絶望的な差だ。

 東京チャリオッツは毎年のように優勝争いをしており、経験の差が如実に出てしまった。

 僕はいずれも途中出場したが、エラーを1つしてしまい、敗戦の一因となってしまった……。

 

 そして最終戦。

 この試合に敗れれば、文句なしに優勝争いは終了である。

 この大事な試合で僕は2番ショートでのスタメンを仰せつかった。

 というのもレギュラーの伊勢原選手がここ数試合精彩を欠いており、最近17打数無安打と不振に陥っているからだ。


 今日のスタメンは次の通りである。

 

 1 額賀(セカンド)

 2 高橋隆(ショート)

 3 岸(センター)

 4 岡村(ファースト)

 5 デュラン(指名打者)

 6 水谷(サード)

 7 富岡(ライト)

 8 生田(キャッチャー)

 9 山形(レフト)

 投 児島


 残りの2試合はアウェーなので、この試合はチームに取ってホーム最終戦となる。

 それもあって、球場は超満員となった。

 このような試合でスタメン出場できることはプロ野球選手冥利につきる。

(ちなみにホームでの今季最終戦とあって、結衣と母親が観戦に来ている。

 妹は来ているかわからない。

 暇だったら行ってあげるかも、と言っていたらしい。

 何で上から目線なんだ。

 誰が学費を出していると思っているのか……。タメイキ💢)

 というわけで、一回表のショートの守備についた。


 先発の児島投手はここまで13勝を上げており、今日勝てば最多勝タイとなる。

 個人記録の面でも大事な試合なのだ。


 初回、強い当たりのショートゴロが2本飛んできたが、僕は落ち着いて捌いた。

 我ながら守備は安定している。

 後は打撃が安定すればレギュラーを狙えるのだが。


 東京チャリオッツの先発はエースの稲留投手。

 互いにエース同士の対戦だ。

 初回裏、1番の額賀選手は9球粘った後、サードゴロに倒れた。

 そして僕は8球目を三振してしまった。

 その後、3番の岸選手もフルカウントから三振し、三者凡退に終わったが、3人で23球を投げさせたのは、後々ボディブローのように効いてくると思う。


 2回表裏はお互いに無得点に終わり、3回表。

 児島投手はエラー絡みで1点を失ってしまった。

(僕のエラーではありません。念のため)


 3回裏、8番の生田選手がフォアボールを選んだが、続く額賀選手が凡退し、僕まで打順が回ってこなかった。


 4回表、児島選手はノーアウト二、三塁のピンチを背負ったが、無失点に抑えた。

 この辺はさすがエースだ。

 

 4回裏、僕からの打順である。

 点差は1点のビハインド。

 何とか塁に出たいところだ。

 しかし、この回もフルカウントまで粘ったが、見逃しの三振に終わってしまった。

 しかし次の岸選手が同点のホームランを打ってくれた。

 これで1対1の同点になった。

 互いに譲らない。


 後続が倒れ、この回が終わり、僕は軽やかな足取りでショートの守備位置に向かった。

 

 


 

 


 


 

 

 


 

 

 

 

 


 

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