第40話 3度目の開幕

 オープン戦は、全て途中からであったが、6試合に出場した。

 打撃は2打数ノーヒットだったが、盗塁は先日の一試合3盗塁を含め、5個決めて、盗塁死は無かった。

 一方、守備ではエラーを1つ犯してしまった。

 ライトに抜けそうな打球に回り込んで追いついたのは良かったが、グラブで弾いてしまった。

 まだまだ修行が足りない。

 

 そして、開幕一軍が発表された。

 残念ながらその中に僕の名前は無かった。

 セカンドはトーマス・ローリー選手と飯田選手、ショートは新井選手と勝山選手、野田選手。

 まずはこの5人で二遊間を回すようだ。

 飯田選手はファースト、サードも守れ、勝山選手は加えて外野の守備もできるので、控えとして、貴重な存在だ。

 本来ならベテランの誉田選手もここに加わるはずだが、怪我のために出遅れている。

 

 ドラフト同期では、杉澤投手と竹下外野手に加え、谷口が初めて開幕一軍を掴み取った。

 僕は最後まで一軍に帯同しながら、二軍スタートとなった。

 悔しいが一軍に近いところまで来ているのも、また確かだろう。

 二軍で成績を残せば、一軍に上がるチャンスが来るはずだ。


 二軍の開幕戦、セカンドの先発は内沢さん、ショートは足立だった。

 内沢さんはやはり能力が高い。

 春期教育リーグでも8試合で3本のホームランを打った。

 守備範囲は広くはないが、堅実であり、足も速い。

 二軍で試合に出るのも大変なのだ。


 この日、僕は7回から内沢さんに替わって出場した。

 10対2の大差で負けている場面であったが、8回ツーアウトで打席が回ってきた。

 僕は外角低めのストレートをうまくバットにのせ、ライト線の内側に落とした。

 少しは右打ちの成果が出てきたかもしれない。

 悠々、二塁まで行くことができ、幸先良いスタートを切った。


 その後、1人ランナーを出した後、スタメン出場していた原谷さんに今季初ホームランが生まれた。

 原谷さんも大卒3年目であり、まだ一軍出場がないので、そろそろ成績を残さないと、今シーズン終了後に首が危ないかもしれない。

 少なくとも今期は二軍のレギュラーを取る必要があるだろう。


 次の試合は2番セカンドでのスタメンだった。

 4打数2安打で1つ盗塁を決めた。

 ここまで5打数3安打で、打率.600。順調なスタートを切ったと言えるだろう。

 

 そして翌日のスタメンはセカンドは足立、ショートは内沢さんで僕は控えであり、7回から足立に替わって出場したが、打席は回ってこなかった。


 その翌日は、セカンドが内沢さんで、僕はショートでスタメンだった。

 どちらかというと、セカンドの方が得意だが、ショートも高校時代やっていたので苦手ではない。

 この日も3打数1安打で、今シーズンの通算打率は何と8打数4安打の5割だ。

 自分で言うのも何だが、いよいよ打撃開眼か?


 その後も二軍のセカンドとショートは僕と内沢さん、足立が交代交代で先発出場し、たまに昨秋のドラフト5位で高卒一年目の木下が途中出場していた。


 四月が終わった時点で、僕は15試合に出場し、42打数14安打の打率.333でホームラン0、打点6、盗塁7と絶好調だった。


 内沢さんは16試合で50打数11安打の.220、ホームラン4本、打点8、盗塁2。

 足立は12試合で33打数6安打の打率.182でホームラン1本、打点4、盗塁0

 そして新人の木下は、6試合で7打数0安打。

 数字の上では僕が優位に立っていると言えた。


 新人の木下は僕とタイプが似ていて、堅守と俊足が売りの内野手だ。

 彼を見ていると、僕の新人の頃を思い出す。

 僕も少しはプロの水に慣れてきたということか。


 幾ら二軍で調子を上げていても、一軍の二遊間が盤石なら、僕の入る余地はない。

 だから一軍の結果はいつも気になっている。

 四月を終わった段階で、セカンドのレギュラー、トーマス・ローリー選手はほとんどの試合に先発出場して、打率.286、ホームラン2本と、助っ人外国人としてはまあまあ、という成績だった。

 そしてショートは大卒二年目の新井選手が、打率.320、ホームラン3本と好調であった。

 レギュラーがそれなりの数字を残していると、中々控え選手に出番はやってこない。

 飯田選手、勝山選手、野田選手は守備固めや、代走で時々、出場するくらいだった。

 僕の立場では二軍でやるべき事をやって、チャンスを伺うしかないのだ。


 だが、チャンスは意外に早くやってきた。

 セカンドのレギュラー、トーマス・ローリー選手が肉離れで戦線離脱したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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