第63話 秋、それは戦力外通告の季節……。

 プロ野球選手の平均の現役期間は、7年程度と言われている。

 誉田選手のように自分の意思で引退を決め、しかも引退セレモニーをやって貰える選手は、ほんの一握りである。

 退団する多くの選手は自分の意思ではなく、チームから戦力外通告を受けて退団する。

 昨年の飯島さんのように。


 戦力外通告の期間は2回あり、一回目は10月1日からクライマックスシリーズが始まるまでだ。

 僕は自分自身については、今年はまだ高卒3年目だし、一軍出場し、初ヒットを打ったし、流石に戦力外通告は無いだろうと思っていた。

 同期入団の中で危ないとしたら、三田村と原谷さんだろう。

 

 三田村は今季初めて二軍の公式戦に登板し、期間を開けながら、9試合に先発し、4勝2敗、防御率2.95の成績だった。

 数字は悪くないが、これまで同期入団の中で唯一、一軍出場がない。

 故障明けであるため、連投が出来ないので、先発でしか使えないし、先発でも5イニングがせいぜいである。

 これをチームがどう評価するかだろう。


 原谷さんは今シーズン初出場し、プロ初打席、初ホームランを記録したが、守備面での不安を露呈し、二軍に降格し、そのままシーズンを終えた。

 大卒3年目であり、伸びしろが無いと判断されれば戦力外もあり得るかもしれない。


 クライマックスシリーズが始まった。

 結果としては、ドラフト同期組は誰も戦力外通告を受けなかった。

 静岡オーシャンズからは5人が戦力外通告を受けたが、いずれも僕らより先に入団した選手であった。

 とりあえずは良かった。

 だがドラフト会議後に、もう1回戦力外通告の期間があり、ドラフトで獲得した選手次第では、更なる戦力外通告もありうる。


 我が静岡オーシャンズは、クライマックスシリーズは2連敗で終わり、名実共に今シーズンが終わった。

 今シーズンのドラフト同期の成績は以下の通りである。


 杉澤投手は、今シーズンも押しも押されもせぬエースとして27試合に先発登板し、13勝8敗、防御率3.12とクライマックスシリーズへの進出に大きく貢献した。

 勝利数、防御率共にリーグ3位と、リーグでも屈指の投手となった。

 来期は年俸も1億を超えると予想されている。


 谷口は19試合に出場し、46打数7安打、打率.152。

 ホームラン2本、打点5。

 二軍では三冠王を獲得したが、一軍では壁に苦しんだ。

 とは言え、最終戦のホームランは来季への自信になっただろう。

 来期の飛躍が期待されている。


 竹下外野手は、73試合に出場し、100打数22安打、打率.220、盗塁12。

 代走出場が多く、数字的には昨シーズンとあまり変わらない成績だった。


 三田村は一軍出場がなく、原谷さんは前述どおりプロ初ホームランを打ったものの、一軍出場は3試合に留まった。


 総括すると、杉澤さんがエースの座に上り詰め、竹下さんが一軍に定着しているものの、僕を含む他の選手はまだ一軍戦力にはなっていないという所だろう。

 僕らの年の静岡オーシャンズのドラフトは、大成功ドラフトと言われたが、現時点では必ずしもその評価通りにはなっていない。


 さて、シーズンが終わると、若手は宮崎フェニックスリーグに参加する。

 今年は僕、谷口、原谷さんに加え、三田村もメンバーに選ばれた。

 宮崎フェニックスリーグのメンバーに選ばれたからといって、戦力外にならないとは限らない。

 昨年も宮崎フェニックスリーグに参加しながら、その後に戦力外通告を受けた選手がいた。

 つまり宮崎フェニックスでのパフォーマンス如何では来年が無いかもしれないのだ。


 宮崎フェニックスリーグの後は、秋季キャンプだ。

 今年も僕は参加するが、さすがにTK組からは外れた。


 大きな動きとして、トーマス・ローリー選手と来期の契約を結ばない事が球団から発表された。

 ドラフトで内野手を獲得するだろうが、現時点でのセカンドは飯田選手、内沢選手、野田選手、僕、二年目の足立の争いか。

 それぞれ一長一短があり、確固たるレギュラーとなりそうな選手はいない。

 つまり僕にも大きなチャンスがある。


 しかしプロ野球チームは、空いた穴をそのままにはしておかない。

 僕は改めてプロの厳しさを実感することになった。

 


  

 

 

 

 


 

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