第294話 リズムは守備から
早いもので開幕して、全チームと対戦した。
ここまで13試合で5勝8敗で5位。
なかなか波に乗れていない。
僕は全13試合に出場し、49打数14安打で打率.286、ホームラン0、打点4、盗塁4(盗塁死2)。
まあ及第点だろうか。
谷口は12試合に出場し、36打数11安打、打率.306、ホームラン3本と好調なスタートを切っている。
凡退した打席でも良い当たりが、野手の正面をついたり、三振してもフルカウントまで粘ったり、明らかに内容のある打席が増えている。
さて、今日から川崎ライツとのアウェーでの二連戦。
今日のスタメンは以下のとおり。
1 高橋(ショート)
2 谷口(レフト)
3 道岡(サード)
4 ダンカン(ファースト)
5 下山(センター)
6 北田(セカンド)
7 西野(ライト)
8 武田(キャッチャー)
9 佐竹(ピッチャー)
何と僕と谷口が1、2番だ。
相手先発が左のサイドスローの井垣投手ということで、一、二番に右打者を並べたということだろうか。
「谷口、俺が塁に出たら、送りバント頼むぜ」
「安心しろ、歩いてホームに帰してやるぜ」
大口を叩く余裕がでてきたようだ。
以前述べたように、谷口はバントも下手ではない。
2番にバントができて、長打も打てるバッターがいるということは相手にとって、脅威かもしれない。
もっとも谷口は足は平凡で、三振も多いので、その点は2番打者としてはマイナス要素だが。
プレーボールがかかり、僕は打席に入った。
谷口の特性を活かすためにも、何とか塁に出たい。
相手先発の井垣投手は、テンポの良い投球が持ち味だ。
サイドスローということもあって、スピードガン表示以上に打席に立つと球が速く感じる。
簡単に2球で追い込まれ、ボール球を挟んでの4球目のシンカーに手を出してしまった。
あえなくセカンドゴロ。
僕はトボトボとベンチに戻った。
次に打席に入った谷口は、フルカウントまで粘った上で、ショートライナーに倒れたが、当たりとしては悪くなかった。
変わらず好調を維持しているようだ。
この回は道岡選手も凡退し、無得点に終わった。
札幌ホワイトベアーズの先発は、大卒5年目右腕の佐竹投手。
昨シーズンは主に先発で3勝5敗と負け越した。
ストレートとチェンジアップ、シュートが持ち味の投手である。
今季は3試合目の先発であり、ここまで0勝1敗となっている。
1回裏、いきなりワンアウト一、二塁のピンチを迎えたが、4番のリード選手をショートゴロに打ち取り、ダブルプレーで切り抜けた。
言うまでもなく、僕は安定して打球を捌いた。
経験を積んで、守備の安定感は増してきたと思う。
二塁が間に合わないと判断すれば無理をせず、一塁は確実にアウトを取る。
それを心がけている。
例え10回ファインプレーをしたとしても、一度のエラーで全て吹き飛んでしまう。
ピッチャーにとって、打ち取った当たりをエラーされると、そのダメージは相当のものだという。
将来、ゴールデングラブ賞の受賞が目標ではあるが、それは一つ一つの地道なプレーの積み重ねだと思う。
だからアウトの宣告を受けるまでは、気を抜かないことをいつも意識している。
試合のリズムは守備から。
僕は軽やかな足取りでベンチに戻った。
試合は両チームとも無得点のまま、4回表を迎えた。
これまで井垣投手の前にパーフェクトに抑え込まれている。
佐竹投手は無失点とはいえ、4安打を打たれており、ここら辺で雰囲気を変えたい。
この回、先頭バッターとして打席に入った。
ここは簡単にアウトにはなりたくない。
だが、井垣投手のテンポの良い投球の前にまたしても2球で追いこまれた。
うーん、このままでは初回の二の舞いだ。
僕は一度、打席を外した。
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