第311話 まさかは続く

 静岡オーシャンズとの初戦のスタメンは次の通りである。

 

 1 高橋(ショート)

 2 谷口(指名打者)

 3 道岡(サード)

 4 ダンカン(ファースト)

 5 下山(センター)

 6 ロイトン(セカンド)

 7 西野(ライト)

 8 武田(キャッチャー)

 9 野中(レフト)

 ピッチャー 須藤


 相手が静岡オーシャンズとあってか、僕と谷口の一、二番コンビが久しぶりに復活した。

スカイリーグの本拠地での試合のため、指名打者が使えるため、谷口が指名打者となった。


 今日の先発は、大卒5年目の右腕の須藤投手。

 ストレートは140km/h前後であるが、カットボール、ツーシーム、パワーカーブを操る、コントロールが良い投手である。


 静岡オーシャンズの先発は、左腕の田部投手。

 僕が人的補償により移籍したのと入れ替わるように、ドラフト1位で入団した投手であり、面識はあるが、一緒にプレーした事は無い。

 スクリューボールが武器の投手ということだ。

 

 キャッチャーは原谷さんではなく、重本捕手。

 田部投手と同じ年のドラフトで2位指名を受けて入団した選手である。


 1回表、先頭バッターとして打席に立った。

 初球。

 いきなりスクリューボール。

 浮き上がって落ちる、厄介な球だ。


 だがコース的には打ちやすいところに来た。

 僕はタイミング良く、右方向に打ち返した。

 真芯に当たった感触がある。

 ライトの小田島選手が懸命にバックしている。

 小田島選手は強肩の外野守備の名手だ。


 抜けてくれ。

 願いながら、一塁に向かって走り出した。

 小田島選手が外野フェンスに張り付き、ジャンプした。

 どうだ?

 フェンス直撃か、取られたか。


 ライト側の観客席が湧いている。

 どういうことだ?

 取られたのか?

 ふと、一塁塁審を見ると腕を回している。

 ということは?


 今シーズン第一号のホームランだ。

 スタンドの最前列に飛び込んでいた。

 ようやく出た。

 古巣相手の先頭打者ホームラン、しかも初球。

 僕は気分良く、ダイヤモンドをゆっくり走り出した。


 そして三塁ベースを周った時、ふと思った。

 もしかしたら、駿河オーシャンスタジアムでのホームランは初めてではないだろうか。

 静岡オーシャンズ戦では泉州ブラックス時代に1試合で2本のホームランを打ったことがあるが、アウェーでは初めてだと思う。多分。


 もしそうなら、8年目でようやくこの球場でホームランを打ったことになる。

 そう考えると感慨深いものがある。

 入団時、ドラフト同期達と初めてこの球場を見た時の感激を思い出す。

 いつかこの球場でホームランを打ちたい。

 あの時、そう思ったのだ。

 

 僕は次打者の谷口とハイタッチして、チームメートの祝福に迎えられて、ベンチに戻り、座って手に残る感触と、ホームランの余韻を楽しんでいた。

 

 すると快音と大歓声が聞こえた。

 ベンチを乗り出して、打球の行方を見ると、何と谷口の打球がレフトスタンドに飛び込んでいた。

 マジか。

 僕と谷口の連続ホームランだ。

 静岡オーシャンズに痛烈な恩返しだ。


 谷口は大歓声に迎えられて、ホームインした。

 昨年まで在籍していたとあって、一部の静岡オーシャンズファンも祝福してくれているようだ。


 そしてチームメートと谷口を出迎え、ベンチに座った時、またしても快音が聞こえた。

 嘘でしょ。

 何と道岡選手にもホームランが生まれていた。

 まさかの初回、先頭打者からの3連続ホームランだ。

 過去にこんな事があっただろうか。

(作者注:過去に5回あったようですね)

 こうなると当然、4番のダンカン選手にもホームランが期待される。

 しかしながら、やや力んだのか浅いセンターフライに終わった。


 後続も凡退したが、この回、まさかの3連続ホームランで、いきなり3点を先制した。

 これでこの試合負けたら、ショックは大きいかもしれない。

 

 

 

 

 

 


 


 

 

 

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