第348話 前半戦終了と熊本入り

 二本のホームランを打たれたが、三上投手はまだ続投するようだ。

 点差が開き、まだ回も4回裏ということもあって、あまりピッチャーを使いたくないのだろう。

 だがまだノーアウトで打順は1番の西野選手。


 普通ならここで気持ちが切れてもおかしくはない場面だが、三上投手は踏ん張った。

 西野選手をショートゴロに打ち取り、さっきホームランの谷口からは三振を奪った。

 そして3番の道岡選手もセンターフライに打ち取り、長かった札幌ホワイトベアーズの攻撃は終わった。


 三上投手は肩で息をしながら、うつむき加減にベンチに戻っていった。

 恐らく三上投手は明日には2軍に落ちるだろう。

 また這い上がってきて欲しい。

 敵ながらにそう思った。


 5回表、大量援護点をもらった五香投手はマウンドで更に躍動した。

 6番から始まる岡山ハイパーズの下位打線を三者連続三振に切って取った。


 その後も札幌ホワイトベアーズ打線は止まらず、試合は14対2で勝利した。

 五香投手は7回を2失点、いわゆるハイクォリティースタートというやつで、勝ち投手となった。

 

 僕は恐怖の9番として、4打数4安打、3打点。

 ホームランとツーベースを1本ずつ放ち、あとスリーベースヒットを打てばサイクルヒットだった。


 谷口も1ホームランを含む5打数3安打と猛打賞。

 僕ら同学年トリオの活躍もあって、最下位岡山ハイパーズ相手に三連勝となり、いよいよオールスター休みを迎えた。


 さあ僕は初めてのオールスターだ。

 どんな経験ができるのだろう。ワクワク。


 熊本へは新幹線で行くことができる。

 岡山から山陽新幹線で博多へ行き、そこから九州新幹線で熊本へ向かう。

 博多から熊本まで約40分。

 北海道なら札幌駅から新千歳空港駅くらいの時間だ。

 

 新幹線は速い。

 もし札幌まで新幹線ができれば、現在函館から札幌まで約3時間半かかるのが、1時間ちょっとになるそうだ。


 さて熊本駅に着いた。

 作者は熊本駅に行ったことがないので、細かい描写をすることができないが、大きくてきれいな駅だ。(子供の感想か)


 試合は明後日であり、明日は前日練習や、雑誌やテレビの取材などがある。

 つまり今日はフリーだ。


 結衣と翔斗、そして僕の母親も今日、熊本入しているので、ホテルのロビーで待ち合わせて、少しだけ市内観光に行くことにしている。

 ホテルのロビーに行くと、結衣と翔斗、そして僕の母親に加えてあたり前のように妹がいた。 


「ねえ、私、「加勢以多」というお菓子が食べてみたいんだけど。

 昔、雑誌で見て、いつか食べてみたいと思っていたのよね」

 そうかい、そうかい。

 それは良かったね。


「お前は仕事はいいのか?

 1年目なんだから、馬車馬のように働いた方がいいんじゃないか」

「有給休暇取ったから大丈夫よ。折角、ご招待頂いたから、来ないと失礼でしょ」

 いつ、誰がご招待したんだ。

 確かに試合のチケットは手配したが、旅費は以前我が家からせしめた旅行券だろう。


 僕らは妹の希望に合わせて、その「加勢以多」なるお菓子を買いに行った。

 中にマルメロのジャムが入っている、上品なお菓子だった。

 昔、殿様に献上した由緒あるお菓子らしい。


 その後は熊本城を見学し、くまモンのキグルミと記念写真を撮った。

 翔斗はくまモンが怖いのか、終始泣いていた。

 

 そう言えば、泉州ブラックスの黒鷲のぬいぐるみもあまり好きで無いので、黒が苦手なのかもしれない。

 相変わらず手には静岡オーシャンズのイルカのぬいぐるみを持っている。


 熊本市内観光を終え、ホテルに帰った。

 結衣達御一行は、今日は熊本の奥座敷と呼ばれる温泉地に泊まるそうだ。

 パンフレットを見ると、すごく高そうだが…。

 まあ、たまには良いか。


 さあいよいよオールスター。

 爪痕を残したい。

 


 

 

 

 

 

 

  

 

 


 

 

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