第383話 浜頓別町ってどこですか?

「はるばる来たぜ、稚内」

「大丈夫ですか、それ。

 著作権に引っかかりませんか」

 僕は稲本投手の発言に突っ込んだ。

 「だって俺、鹿児島の実家から、飛行機3つ乗り継いだんだぜ」

 確かに国内線に3回乗り継ぎは疲れるかもしれない。


 僕と稲本投手は今、稚内空港にいる。

 なぜかと言うと僕は今シーズン、稲本投手と共に、浜頓別町という道北の街の応援大使に就任(第278話)しており、今日はそのイベントに参加するからだ。


 浜頓別町は、稚内からオホーツク海沿いに100km弱、南に下がった場所にある町ということだ。


 正直なところ、応援大使に就任するまで、浜頓別という地名を聞いたことも無かった。

 クッチャロ湖という、白鳥の飛来で知る人ぞ知る湖があるそうだが、北海道には屈斜路湖(くっしゃろこ)とか倶多楽湖(くったらこ)という似たような名前の湖もあり、紛らわしい。


 昔は鉄道も通っていたらしいが、30年くらい前に廃線になったそうだ。

 そのため稚内か音威子府(おといねっぷ)という所から、車で行く必要があるのだ。

(ちなみに音威子府を予備知識無しに読めたら、凄いと思う)


「さぶ」

 用意された車に乗り込むために、空港の外に出たが、風がとても冷たい。

 吹雪いてはいないが、雪がチラついている。

 これぞ、北国の冬だ。

 

「浜頓別町は初めてですか?」

 出迎えてくれた、町役場の職員の方に車の中で聞かれた。

「はい、ていうか北海道内のほとんどの町が初めてです。

 新千歳空港と札幌の間と、先日行った温泉以外、行ったことがありません」

 僕は正直に答えた。

 稲本投手も同様のようだ。


 職員の方がハハハと笑って、「まあ、そうですよね。

 私も長いこと北海道に住んでいても、行ったことが無い場所はいっぱいありますよ。

 何しろ北海道は広いですから」


 新千歳空港駅の改札を出た所に、北海道と本州の地図を重ねた記念撮影スポットがある。

 それを見ても確かに北海道は大きい。

 稚内から札幌までで約400km、札幌から函館で約300km、つまり稚内から函館は約700kmあるそうだ。


 これは大阪から仙台や鹿児島に行くよりも遠いらしい。

 やっぱり北海道はでっかいどう…。


 稚内空港から浜頓別町は車で約1時間半くらい。

 途中、宗谷岬に寄ったので、2時間近くかかった。

 お約束どおり、宗谷岬にある日本最北端の地の前で、稲本投手と写真を撮った。


 宗谷岬の付近は、日本最北端の土産物屋や、郵便局、コンビニなど、日本最北端を標榜している箇所が多かった。


 途中に猿払という村があり、ホタテ漁で道内屈指の豊かな自治体だそうだ。

 ホタテの貝柱は好物であり、途中の物産店に寄ってもらい、購入した。


 浜頓別町につくと、大勢の町民の方が出迎えてくれた。

 そして町の小学校で野球教室をやり、その後、公民館でトークショーを行った。

 僕ら二人が前の舞台に座って、司会者の質問に答えるのがメインだ。

 

「女性アナウンサーと知り合う機会はあるんですか?」

「契約金は何に使ったのですか?」

「ファンの方と付き合った事はありますか?」

「どんな車に乗っているんですか?」

「趣味は何ですか」

「フリーエージェントの資格を取ったら、どこのチームに行きたいですか?」

「嫌いなコーチや選手はいますか?」

「この話がマンネリ化していることについて、対策はありますか?」

「この小説の作者に対して言いたい事はありますか?」等など。

 

 答えづらい質問もあったが、稲本投手の爆笑トークもあって、かなり盛り上がった。

(内容は別の機会に。公序良俗に触れたら、まずいので…)


 その日のうちに稚内に戻り、一泊して、明日の飛行機で帰る。

 僕らは海沿いのシティホテルに泊まり、夜は稲本投手と球団職員の方と海の幸を堪能した。


 お店の方からは、夏の稚内も良いですよ、と教えてもらった。

 海に利尻富士が浮いているように見える写真や、ハマナスの花が咲き誇った丘の写真など、夏の稚内の様子がわかる写真を何枚か見せてもらった。


 いつか引退したら、夏の稚内にも来てみたいと思う。

 その時は北海道を車で一周するのも良いな、と思った。


 まあまだまだ先の話だ。

 きっと、多分、恐らく。


 

 


 

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