第242話 影のヒーロー?

 三連戦の最終日。

 新潟コンドルズの先発が、左腕の佐渡投手とあって、僕は1番ショートでスタメン出場となった。

 そして平井はベンチスタートであった。


 僕は第一打席はショートライナー、第二打席はライトライナーといずれも良い当たりをしたものの、相手チームの好捕に阻まれた。


 第三打席は5回表ツーアウトランナー無しで回ってきた。

 ここまで2対1で新潟コンドルズがリードしている。

 マウンドは引き続き、先発の佐渡投手が上がっている。

 この2打席、記録は凡退だが決して内容は悪くなかった。

 

「僕は打てる、僕は打てる」

 自分に言い聞かせるように呟きながら、打席に向かった。

 いくらいい当たりをしていても、結果がついてこなければ気分が乗らない。


 初球。

 ど真ん中へのツーシーム。

 あまりにも絶好球過ぎて見逃してしまった。

 打席で迷いがあるのかもしれない。


 僕は一度、バッターボックスを外して軽く素振りをした。

 佐渡投手はあまり投球間隔を開けず、次々と投げ込んでくるタイプであり、相手のペースに乗らないというのも大事なのだ。


 2球目。

 外角低めへのストレート。

 外れていると思って、見逃したが、判定はストライク。


 そしてまた僕はタイムを取り、バッターボックスから出た。

 佐渡投手がちょっと苛ついているのが、視界に入った。


 3球目。

 外角低めへのツーシーム。

 ファールで逃げた。

 カウントはノーボール、ツーストライク。


 4球目。

 内角高めへのストレート。

 見送ってボール。

 そして僕はまたタイムを取ってバッターボックスを外した。


 5球目。

 外角低めへのツーシーム。

 見送ればボールかもしれないが、あえてカットした。


 6球目。

 低めへのストレートかと思いきや、ホームベース手前で落ちた。

 何とか当てて、ファール。

 ワンボール、ツーストライクのまま。


 7球目。

 外角低めへのカーブ。

 これも見送ってボール。

 ツーボール、ツーストライクとなった。


 8球目。

 内角高めへのストレート。

 これもファールとした。


 9球目。

 外角低めへのツーシーム。

 これもファールとした。


 10球目。

 フォーク。

 見極めた。

 スリーボール、ツーストライク。


 11球目。

 外角低めへのツーシーム。

 辛うじてバットに当てた。

 ファール。


 そして12球目。

 フォークを見極め、フォアボールを選んだ。

 佐渡投手は苛ついたようにマウンドを軽く蹴った。

 しめしめ、思うツボだ。


 今日は2番には額賀選手が入っている。

 額賀選手はフルカウントまで粘り、9球投げされたが、最後は見逃しの三振に倒れた。


 だが僕と額賀選手でツーアウトランナー無しから21球投げさせた。

 もし次の回も続投したらボディブローのように効いてくるだろう。


 そして2対1のまま迎えた、6回表、3番の岸選手と4番の岡村選手が連続でツーベースヒットを打ち、2対2の同点に追いついた。

 更に続くデュラン選手が初球をレフトスタンドに打ち込み、試合をひっくり返した。

 点差は4対2。


 ここで新潟コンドルズベンチは、佐渡投手を諦め、輪島投手をマウンドに送った。

 

 見ているファンの方は、佐渡投手が6回に急に崩れたように見えたかもしれないが、実は5回の僕と額賀選手で、崩していたのだ。

 もしこのまま試合に勝ったら、影のヒーローは僕と額賀選手だと思う。

 あまり注目されないだろうけど。


 リードしたので、ここからは勝ちパターンの継投となる。

 6回裏は綾瀬投手が三者凡退に抑えた。


 7回表の攻撃は三者凡退に終わり(僕に打席が回ってきたがショートゴロに終わった)、その裏は倉田投手が簡単に三者凡退に抑えた。


 8回表裏、9回表もお互いに無得点で、試合は4対2と泉州ブラックスがリードしたまま、いよいよ9回裏の新潟コンドルズの攻撃となった。


 9回裏は泉州ブラックスの誇る抑えのエース、平塚投手。

 そして簡単にツーアウトを取った時、新潟コンドルズは代打に平井を告げた。

 

 

 

 



 

 


 

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