第321話 接戦は続く

 杉澤投手は青息吐息ではあったが、札幌ホワイトベアーズ打線を5回を1失点で抑えた。

 打たれたヒットは7本、四球3個、死球1個。

 数字だけ見ると、良く1失点に抑えたものだ。

 

 毎回ランナーを出しながらも、要所を締めた。

 かってのピッチングと比べると、物足りなさは否めないが、良く投げたと言えるだろう。


 五香投手は5回裏もマウンドに上がり、この回も9球で三者凡退に抑えた。

 4回に味方のエラーもあり(すみません)、21球を投げたが、それ以外の回は4球、7球、7球、9球と省エネ投球で、5回終了時点で48球しか投げていない。


 内容的にもエラー(ごめんなさい)とフォアボールのランナーを1人ずつ出しただけであり、ここまでノーヒットに押さえている。

 この調子なら、6回以降も続投するのだろうか。


 6回表の札幌ホワイトベアーズの攻撃は、5番の下山選手からだ。

 この回のマウンドには杉澤投手は上がらず、本宮投手が投球練習をしている。


 本宮投手は昨日に引き続き、札幌ホワイトベアーズ打線を三者凡退に抑えた。


 そして6回裏。

 札幌ホワイトベアーズのマウンドには、五香投手が上がっている。

 当初は5回までの予定だったかもしれないが、これだけ良いピッチングをしていると変えるのは難しいだろう。


 この回の静岡オーシャンズの先頭バッターは、9番のモブキャラこと、原谷捕手からだ。

 配球を間違えなければ、超安牌である。

 内角低めと外角高めにピンポイントでツボを持っているが、そこさえ投げなければ打たれることはない。


 だが五香投手は初球、よりによってそのツボである、真ん中寄りの内角低めに投げてしまった。

 原谷捕手は内角低めは基本的に苦手であるが、そのコースだけはバットに当てることができる。


 思い切り振り抜いた打球は、見事な放物線を描き、レフトスタンドに飛びこんだ。

 昨日に引き続き、2日連続のホームランである。


 五香投手はマウンドで呆然としている。

 それはそうだろう。

 打率1割台の安牌に打たれたのだ。

 ショックは大きい。


 僕ら内野陣はマウンドに集まった。

「五香、ドンマイ。

 原谷さんだってバットを持って立っているから、振ればこういうことはあるさ。

 道端の石ころに躓いて転んだと思って、諦めよう」

「そうだ。まだ同点だ。

 ここまでが出来過ぎだったんだ」

 僕に続いて、道岡選手が声をかけた。


 これで1対1の同点。

 正直なところ、両先発の名前を聞いた時は、打撃戦になると思っていたから、接戦になったのは予想外と言えよう。


 五香投手は後続を抑えた。

 恐らく7回からはピッチャーが変わると思われるが、結局6回を1安打1失点に抑えた事になる。

 この内容なら次のチャンスをもらえるだろう。


 7回表の札幌ホワイトベアーズの攻撃は、8番の上杉捕手からである。

 静岡オーシャンズのマウンドには、6回に引き続き本宮投手が上がっている。


 上杉捕手はツーボール、ツーストライクからの5球目をうまくライト前にライナーで運んだ。

 先頭バッターが出た。

 勝ち越しのチャンスだ。


 9番の野中選手は、初球を見事に送りバントし、これでワンアウト二塁。

 ここで僕に打順が回ってきた。

 

 今日は最初の打席でツーベースヒットを打ったが、エラーもしたので、何とか取り返したい。

 僕はバッターボックスに向かった。


 本宮投手はストレート主体の右のパワーピッチャーであり、正直なところ、得意なタイプではない。

 だからコンパクトに打ち返すことを心がけて、二塁ランナーをホームに迎え入れたい。


 初球。

 内角低めへのストレート。

 見逃してボール。

 ストライクと宣告されてもおかしくないくらい良い球だ。


 2球目。

 外角高めへのストレート。

 遠い。これも見送った。

 だが判定はストライク。

 マジか。

 初球の内角へのストレートで、無意識に目線が内寄りになったいたようだ。

 

 だからといって、目線を外寄りにすると今度は内角球にやられる。

 僕は一度宙を見上げ、目線をニュートラルにすべく切り替えた。


 3球目。

 またしても外角へのストレート。

 いや少し変化した。ツーシームか。

 今度もストライクゾーンっぽい。

 僕はバットに当ててカットした。

 

 本宮投手のストレートにタイミングを合わせるために、バットに当てたのだ。

 これでワンボール、ツーストライク。

 カウントとしては追い込まれた。 


 次は内角へのストレートか、真ん中へのチェンジアップか。

 僕は一度バッターボックスを外して素振りをした。

 

 

 

 

 


 

 



 

 

 

 

 

 

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