第361話 まだまだ諦めてはいない
1点を失い気落ちしたのか、鍋釜投手は道岡選手にタイムリーヒットを浴び、二塁ランナーの僕はホームインした。
これで2対0。
熊本ファイアーズの土田投手コーチがベンチから出てきて、マウンドに向かった。
鍋釜投手は自慢の(?)イケメンを少し歪ませて、土田投手コーチ、大隅捕手と何か話している。
だがここは続投のようだ。
バッターボックスには一発のあるダンカン選手が入った。
初球、カットボールが内角高目へ入った。
これは明らか失投だろう。
打球は快音を残して、センターの外野スタンドに飛び込んた。
ツーランホームラン。
これで4対0。
堪らず熊本ファイアーズの御門監督が出てきて、ピッチャー交代となった。
鍋釜投手は5回2/3を投げて、4失点。
次のチャンスを与えられるか微妙だろう。
こうなると札幌ホワイトベアーズ打線は止まらない。
変わった木下投手を攻め立て、5番の下山選手がツーベースヒット、6番の立花選手がタイムリーヒット、7番西野選手のスリーベースヒットと畳みかけ、更に2点を追加した。
これで6対0。
更に8番の上杉捕手もホームランを放ち、9番の青村選手の見逃しの三振でようやくこの回の猛攻を終えた。
この回8点。
青村投手には十分すぎる援護点だ。
試合は9対1で札幌ホワイトベアーズが勝利し、連敗を5で止めた。
青村投手は結局、7回を2安打無失点で、今季8勝目を挙げた。
僕は5打数1安打、二塁打1と少し打率が下がったが、まあ良しとしよう。
三打席目は記録はエラーだが、良い当たりだったし。
連敗を抜けた札幌ホワイトベアーズは、8月に入ると、調子を取り戻した。
3連勝の後、1敗を挟んで4連勝。
そして2連敗を挟んで、また4連勝。
最近、14試合では11勝3敗となり、順位も2位に浮上した。
僕はというと、ここまでチーム100試合中、96試合に出場し、382打数105安打の打率.275、ホームラン3本、打点26、盗塁22(失敗9)となっている。
打率はベストテンの11位。
10位とはわずか2厘差だ。
目標である規定打席までも、後27打席だ。
ちなみに谷口は77試合に出場し、235打数56安打の打率.238、ホームラン9本、打点28、犠打21。
規定打席に到達していないが、過去最高の成績を残している。
僕との一、二番コンビが定着しつつあり、チームとしても上位打線を固定できるのは良いことだろう。
季節は早くもお盆を過ぎ、札幌は暑さが和らいできた。
7月から8月にかけての札幌は連日30度を超すなど、例年よりも暑かったようだが、空気がカラッとしているので、それほど苦では無かった。
結衣も天気のいい日は、翔斗を連れて、大通公園や近所の公園に行っていたようだ。
札幌は公園が多く、小さな公園もそこら中にある。
そう言えば、札幌の公園には小さな山がある事が多い。
なぜかと言うと、札幌では小学校の冬の体育の授業でスキーをやるため、その練習用だそうだ。
ちなみに北海道のどこでもスキーをやるわけではなく、帯広とか苫小牧ではスキーの代わりにスケートをやるそうだ。
僕はスキーは全くやったことが無いが、もし翔斗が札幌で小学校に入学したらスキーをやるのかもしれない。
さてチームは首位の京阪ジャガーズと9.5ゲーム差。
追いつくのは困難かもしれないが、僕らは諦めてはいない。
今日からホームでの京阪ジャガーズとの首位攻防戦だ。
三連勝すれば、わずかに背中が見えてくるかもしれない。
さあ、頑張ろう。
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