第482話 合同記者会見
まずは幹事会社からの代表質問があり、その後、各新聞社やテレビ局からの質問に答える形式だ。
「まずは大平監督にお話を伺います。
優勝決定が最終戦にもつれこむ、大混戦となり、それを制して優勝した今のお気持ちはいかがですか?」
「はい、最後まで優勝争いを出来たこと、そして最後まで諦めずに戦えたことがこの結果に繋がったと思います」
「今日の最終戦。
逆転優勝がかかる大一番となりましたが、試合前、どんな事を考えていましたか?」
「はい、平常心を保ちつつも、プラスアルファの力を出せた方が勝つと思っていました。
その点ではバーリンの好投、そして高橋の活躍がまさにそれだったのかと思います」
「京阪ジャガーズはエース3人が継投する、スクランブル体制を取った中、札幌ホワイトベアーズはバーリン投手を5回まで引っ張りましたね。
その点はいかがですか」
「はい、うちのチームは鬼頭、ルーカス、大東、新藤という中継ぎと抑えが確立しているので、バーリンで行けるところまで行って、後は小刻みな継投で乗り切ろうと思っていました」
「バーリン投手が5回1失点で投げきったのは大きかったのではないでしょうか?」
「はい、そうですね。
彼は大リーグでの経験もありますし、流石だと思います」
「そして高橋選手の神がかり的な大活躍。
これも嬉しい誤算だったのではないですか?」
「本当にそうですね。
今年はライバルも多く、前半戦は苦しかったと思いますが、最後に大仕事をやってくれました」
「その高橋選手に伺います。
今日の大一番でのサイクルヒット、そして5得点全てに絡む大活躍。
今のお気持ちはいかがですか?」
「…」
「高橋選手、いかがでしょうか?」
しかし広くて明るい会場だな。
ところであの後ろの方の女性記者、可愛いな。
どこの社だろう。
僕はぼんやりとそんな事を考えていた。
「イテッ」
「おい、記者に聞かれてるぞ」
隣の谷口に肘鉄を食らわされた。
「え、あ、はい、何でしょう」
我に返り、谷口、後で覚えていろよ、と思いながら僕はマイクを取った。
「今日の大一番でのサイクルヒット、そして5得点全てに絡む大活躍。
今のお気持ちはいかがですか?」
「え、あ、はい、嬉しいです」
「今日の試合前、どんな事を考えていましたか?」
「あ、はい、今シーズンが終わったら、南の島にでも行きたいなと考えていました」
「えーと、今日の試合への意気込みについては、如何だったでしょうか」
「はい、いつもと同じように正常心を心がけていました」
「平常心の言い間違いですね。その平常心がこの大一番でのサイクルヒットという活躍に繋がったと思いますが、その点はいかがですか?」
「はい、自分でもビックリしています。
まるで出来の悪い野球小説の主人公にでもなったみたいで、嘘みたいです」
「次にエースの青村投手に伺います。
この京阪ジャガーズとの2連戦。1試合でも負けるか、引き分けると優勝を逃すという大事な昨日の試合で、見事、勝ち投手となりました。
その試合を振り返っていかがですか」
「はい、この大事な試合を任されたことを意気に感じましたし、何とか今日の試合に繋ぎたいと思って、腕を振りました」
「本当に気持ちの乗った素晴らしい好投でした。
そして今日の試合、どのように見ていましたか?」
「はい、今のチーム状況なら決して負けないと思っていました。
でも正直、ハラハラして見ていました。
チームメートの皆、ありがとう。
このチームで野球をできて幸せです」
青村投手は僕らの方を見ながら、そう言った。
そうですね、僕も同感です。
「次に野手陣を代表して、道岡選手にお話を伺います。
7年ぶりのリーグ優勝。
今の率直なお気持ちをお聞かせください」
「はい、僕は前回の優勝も経験していますが、選手も入れ替わり、中々勝てない年もありました。
それでも応援してくれたファンの皆様にまずは感謝を申し上げたいと思います」
まさに優等生の見本のような発言。
さすがは道岡選手。
「ここ数年、低迷した時期もありましたが、今シーズン、優勝できた大きな要因は何だと思いますか」
「はい、昨シーズンあたりから、新しい戦力の台頭があり、チーム内の競争が激しくなったというのも、チーム力の向上に繋がったと思います。
ピッチャーでは、稲本、須藤、庄司、バーリン。
そしていわゆるKLDSと呼ばれる救援陣も、安定していました。
野手ではここにいる高橋、谷口、湯川を始めとして若手選手の台頭によって、チームが活性化されました。
皆、ありがとう。
このチームは最高です」
…というように記者会見は、30分くらい続いた。
そしてその後はチームバスでホテルへ移動し、ビールかけだ。
さあ初めてのビールかけ。
どんな感じかな。
ワクワク。
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