第278話 浜頓別町観光大使に就任?
契約更改、記者会見が終わり、球団事務所で球団職員の方々に挨拶し、またグッズにサインをしたり、幾つかの書類に署名したりした。
札幌ホワイトベアーズの選手は、北海道内の各市町村の観光大使というのに任命されており、来年は僕は浜頓別という町の観光大使となった。
来季のシーズンオフには、実際に浜頓別町に行って、ファンの方々と交流するらしい。
僕は今回、浜頓別町という場所を初めて知った。
地図で見ると、北海道の北、オホーツク海に面したところにあるようだ。
クッチャロ湖という湖があり、そこは白鳥が来ることで一部では知られているようだ。
JRも無いようだし、どうやって行くんだろう?
この日は札幌市内のホテルに一泊して、明日、結衣と翔斗の待つ大阪に帰る。
初めて冬の札幌中心街に来たが、至るところにイルミネーションがあり、街中がカラフルに光輝いている。
それがまた、真っ白い雪に綺麗に調和しているのだ。
四季によって街の雰囲気が大きく変わるのも、札幌という街の魅力ということだ。
僕は恐らく来年以降、この街で結衣と翔斗と暮らす事になるだろう。
それがちょっと楽しみに思えた。
札幌駅前のホテルにチェックインし部屋に入ると、携帯電話に着信があった。
谷口からだった。
「もしもし」
「聞いたか」
「ああ、さっき聞いた」
「まさかまた一緒にやることになるなんてな」
「本当だな。一寸先は闇だな」
「お前、それ意味知ってて言っているのか」
「いや、良く知らない」
「相変わらずだな。でも正直、また隆と一緒にやれるのは嬉しいぜ。
俺がヒットで出たら、代走頼むぜ」
「バカヤロウ。俺はレギュラー取るんだ。お前こそ、代打要員だ」
「そうか、シーリーグは指名打者が無いんだったな」
それを聞いてハッとした。
シーリーグはピッチャーも打席に立つので、代打を使う場面が、スカイリーグよりも多い。
だから谷口は代打で出る機会が増えるかもしれない。
今季、谷口は静岡オーシャンズで出場機会に恵まれなかった。
昨季までは期待の長距離砲ということで、君津前監督からも期待を受けていた。
一昨季はシーズン終盤にいよいよ覚醒か?、というような活躍を見せ、昨季は開幕から四番で起用された。
当初は満塁ホームランを打つなど活躍したが、やがて苦手なコースを執拗につかれ、バットから快音が消えた。
それでも君津前監督は辛抱強く起用を続けたが、やがて成績不振を理由に休養し、谷口も二軍に落ちた。
そして今季は二軍で幾ら打っても一軍昇格は無く、飼い殺し状態となったのだ。
それでも谷口はいつか来るかもしれないチャンスに備え、練習、試合いずれも手を抜かなかった、と人づてに聞いている。
今回の移籍は、谷口にとっても大チャンスかもしれない。
「札幌ホワイトベアーズのチームの雰囲気はどうだ?」
「道岡さん以外は、若い選手が多いな。
だから雰囲気は明るいかな」
静岡オーシャンズでも、泉州ブラックスでも、ベテラン選手が何人も、レギュラーにいたので、僕らはずっと若手の部類だった。
しかし札幌ホワイトベアーズでは、来年26歳を迎える僕と谷口でも中堅の部類に入るのだ。
「隆も26か。子供も産まれたし、おっさんの仲間入りだな」
「お前も同い年だろう。
ていうかお前は、結婚しないのか」
「言わなかったっけ。
昨シーズン後、結婚した」
「聞いてねぇよ。マジか」
「ああ、お前と同じように高校時代のクラスメートと結婚した」
「式は?」
「身内だけで挙げた」
谷口らしい。
「それなら奥さんと札幌に住むのか?」
「そうだな。これから新居を探す。どの辺が良いかわかるか?」
「さあ、俺は札幌はススキノと大通公園しかしらない」
「ごめん、聞いた相手が悪かったな」
「どこか良いところがあれば、教えてくれ。
いずれ俺のところも家族が来る予定だ」
「そうか、楽しくなりそうだな。おっと、球団から連絡がきたみたいだ。またな」
そう言って、電話が切れた。
移籍して約4ヶ月。
少しずつチームに馴染んできたが、谷口が来ることは僕にとっては喜ばしいし、谷口にとっても僕がいることは心強いだろう。
よし来季は2人で暴れよう。
(決してススキノで暴れるという意味ではありません)
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