第363話 虎対ジャガー?
1点を返し、さらにワンアウト一塁。
打順は2番の谷口。
送りバントでチャンスに強い道岡選手につなぐ手もあるし、僕の単独スチールもある。
ヒットエンドランも面白いかもしれない。
僕は一塁ベース上から、ベンチのサインを見た。
ふむふむ、そう来たか。
初球。
外角低めへのストレート。
谷口は見送った。
ボールワン。
2球目。
内角へのストレート。
これは入った。
ストライク。
これでワンボール、ワンストライク。
そして3球目。
僕はスタートを切った。
そして谷口は右方向へゴロを放った。
ヒットエンドランだ。
打球はうまく一、二塁間を抜けて、ライト前に到達した。
僕はもちろん二塁を蹴って、三塁に向かった。
これでワンアウト一、三塁。
反撃の大チャンスだ。
ベンチのサインは初球と2球目がグリーンライトであり、3球目がヒットエンドランだった。
谷口も成長したものだ。
かってならこんなに器用なバッティングはできなかっただろう。
さてバッターが道岡選手なので、絶好の反撃のチャンスであり、悪くとも1点は取りたいところだ。
初球。
外角低めへのカーブ。
今日、これまで投げていなかった球だ。
見事にストライクゾーンぎりぎりに決まった。
道岡選手は表情を変えないが、面食らっただろう。
2球目。
内角高目へのストレート。
谷口は宗投手が投じるなり、スタートを切った。
城戸捕手が二塁に投げた瞬間、僕はスタートを切った。
ベースカバーに入ったセカンドの浅井選手が捕球し、ホームに投げてきた。
城戸捕手が捕球し、タッチプレーになった。
判定は?
「セーフ」
やったぜ。
記録はホームスチールだ。
もちろん相手バッテリーも頭にあっただろうが、警戒されている場面で決めるのがプロである。
これで2対4と差を詰めた。
そしてまだワンアウト二塁で、バッターは道岡選手だ。
フルカウントからの外角低めへのストレートを見事にライト前に弾き返した。
さすがチャンスの鬼。
谷口は三塁を蹴ってホームイン。
これで3対4。
後続が凡退し、同点にはならなかったが、点差は1点差に詰まった。
まだまだ試合はわからない。
そして稲本投手は粘り、4回、5回、6回とランナーは出すものの要所を締め、無失点に抑えた。
だが我が札幌ホワイトベアーズもランナーは出すものの中々追加点は取れず、試合は早くもラッキーセブン、7回の攻防を迎えた。
札幌ホワイトベアーズはマウンドに鬼頭投手を送った。
顔が四角く特徴的なため、僕は心の中であの有名な日本映画の主人公を思い浮かべている。
(柴又を舞台にしたあの映画です。亀有を舞台にしたあの漫画ではありません)
脳内再生される登場曲はもちろん、あの歌である。
ジャガーに対抗するのはやっぱり虎だよね。
相手チームにとって、フーテンならぬ「打てん」となれば良いが…と呑気に考えていたら、いきなりフォアボール3つでノーアウト満塁のピンチを背負った。
そして迎えるバッターは、もっかリーグホームラン王の下條選手。
あれ?
この展開って、初回にも無かったか?
もしかしてコピペ?
初球。ど真ん中へのストレート。
やけのやんぱち、日焼けの茄子か。
快音を残し、火の出るような打球がショートに飛んできた。
僕はピクリとも動かず、真正面で打球を捕球した。
グラブ越しに強い衝撃を感じた。
そしてその余韻を楽しむ間も無く、二塁の光村選手に送球した。
二塁ランナーが飛び出しておりアウト。
そして光村選手は一塁の下山選手に送球し、やはり一塁ランナーが戻らずアウト。
一瞬にしてピンチを防いだ、マウンドの◯さんじゃなかった、鬼頭投手はマウンドでガッツポーズし、雄叫びをあげた。
それはそうだろう。
抜けていれば、ランナーが一掃となってもおかしくなかった。
絶体絶命のピンチがトリプルプレーで終了である。
これをバカヅキと言わずして、何と言うのだろう。
ピンチの後にはチャンスあり。
試合は7回の裏を迎えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます