第552話 反撃開始!!
8点差あるので、1点ずつ返していきたいところだ。
下山選手はランナーがいない時よりも、いる時の方が打率が高い。
車谷投手が初球を投じた瞬間、一塁ランナーの岡谷選手はスタートを切り、二塁に進んだ。
城戸捕手は投げる素振りを見せなかったが、この場面は盗塁は記録される。
これでノーアウト二、三塁となり、京阪ジャガーズバッテリーは満塁策を取った。
嫌らしい下山選手よりも、ダンカン選手の方が与し易いという判断だろう。
京阪ジャガーズバッテリーはダブルプレー隊形を取っている。
1点は仕方が無いという判断だろう。
そして車谷投手はダンカン選手の苦手な外角低めの出し入れで勝負し、三振を奪った。
これでワンアウト満塁。
もし続く谷口がダブルプレーに倒れたら、一気に反撃の機運もしぼんでしまう。
京阪ジャガーズバッテリーは谷口に対しても外角低めの出し入れで勝負してくるだろう。
わかっていても打てないのが、車谷投手の球だ。
初球。
外角低めへのストレート。
谷口は打ちに行ったが、ファール。
2球目。
外角低めへのツーシーム。
見送ったが、ストライク。
この辺のコントロールは流石だ。
谷口は2球で追い込まれてしまった。
そして3球目。
外角低めへのスプリット。
見送って、ボール。
昔の谷口なら振ってしまっただろうが、ここは我慢した。
そして4球目。
外角へのカーブ。
これは完全に裏をかかれた…と思ったが、谷口は踏みこんでライト方向に打ち返した。
打球はファースト頭上を越えて、ライト線上に落ちた。
三塁ランナーの僕、そして二塁ランナーの岡谷選手はホームインし、下山選手は三塁、谷口は二塁に進んだ。
これで2点を返し、まだワンアウト二、三塁。
マウンドの車谷投手は首をひねっている。
いくら点差があるとは言え、防御率が悪化したことに対して、不快に思っているようだ。
だが車谷投手は続投のようだ。
次は打率.127と不振にあえぐブランドン選手だし、その次はバッティングが苦手な浅利選手だ。
この回を投げきって降板という目論見だろう。
ブランドン選手はバッターボックスに入り、ゆったりとした構えをしている。
何だろう。
この打席のブランドン選手はこれまでと少し違う雰囲気を感じる。
ブランドン選手は道岡選手のケガに伴って一軍昇格したものの、思うような結果が出ず、焦っているように見えていた。
ところがこの打席は何となく余裕すら感じられる。
つまり打ちそうな雰囲気がある。
そして初球。
内角低めへのスプリット。
苦手なコースだと思うが、うまく拾った。
打球はショートの頭上を越え、レフト前に弾んでいる。
三塁ランナーの下山選手はホームインし、二塁ランナーの谷口も三塁に進んだ。
ブランドン選手は一塁ベース上でガッツポーズしている。
これでスコアは9対4となり、なおもワンアウト一、三塁。
ここでたまらず京阪ジャガーズの村野監督が出てきて、ピッチャー交替を告げた。
車谷投手は首を捻りながらマウンドを降り、ドイル投手がマウンドに上がった。
京阪ジャガーズは投手陣が充実しているので、点差が開いている場面でも良いピッチャーが出てくる。
次のバッターは守備職人の浅利選手だ。
つまりバッティングにはあまり期待できない。
ドイル投手は160km/hを越える、力のあるストレートを投げ込む右腕であり、あの球を外野に弾き返すのは難しいだろう。
京阪ジャガーズの守備隊系は引き続きダブルプレーシフト。
そして外野陣もかなり前に来ている。
一塁ランナーのブランドン選手も、バッターの浅利選手もそれ程足は速くないので、内野ゴロを打つとダブルプレーとなる可能性は高いだろう。
左打席に入った浅利選手はバットを短くもっている。
そして初球。
内角へのカットボール。
浅利選手はやや仰け反ったが、判定はストライク。
2球目。
外角へのストレート。
これもギリギリ決まりストライク。
簡単に追い込まれた。
そして3球目。
真ん中低めへのスプリット。
素晴らしいコースだったが、浅利選手はうまくすくい上げた。
打球は左中間に飛んでいる。
センターの俊足、中道選手が懸命にバックし、グラブを出したが、打球はその先を掠め、フィールドに落ちた。
三塁ランナーの下山選手はもちろんのこと、一塁ランナーのブランドン選手も激走し、ホームインした。
浅利選手は三塁まで進んだ。
見事なタイムリースリーベースヒットだ。
非力と思われていたが、浅利選手もプロ野球選手。
ツボにハマればこういう打球を打てるのだ。
これで9対6。
試合はわからなくなってきた。
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