第245話 このトンネルはどこまで続く?
2回表が終わり、その裏の守備。
またしても先頭バッターの岡谷選手の鋭いライナーが真正面に飛んできた。
真正面の強い打球は取りづらいのだ。
しかも打球にドライブ回転がかかっており、捕球しようとしたら、目の前で急に落ちた。
僕はまたしてもグラブには当てたが、落としてしまった。
懸命に拾い上げて一塁に送球した。
岡谷選手も俊足。
またしても微妙なタイミングだ。
審判の判定はアウト。
東京チャリオッツベンチはリクエストをした。
僕は唇を噛み締め、オーロラビジョンに流れる映像を見た。
今度も微妙だ。
どの角度から見ても、捕球と一塁到達が同時に見える。
うーん…。
審判が出てきた。
どうだ?判定は?
「アウト」
よかったぁ~。
僕はホッとしてその場にしゃがみこんだ。
もしセーフだったら、僕にエラーがついたかもしれない。
この回はジョーンズ投手が後続を抑え、無失点で切り抜けた。
3回表は僕に打順が回る。
結果を恐れずに思い切って振ろう。
そう思いながら、ベンチに戻った。
この回の先頭バッターは、8番の高台捕手。
フルカウントまで粘って、フォアボールで一塁に出塁した。
続く9番の山形選手は初級をライト前に運んだ。
これでノーアウト一、二塁。
ここで僕の打席が回ってきた。
サインはもちろん、送りバント…ではなかった。
ヒットエンドラン。
マジで?
この絶不調の僕に?
僕はバッターボックスに入った。
東京チャリオッツの守備陣は当然バントシフトを敷いている。
それはそうだろう。
打席に入った僕はバントの構えをした。
初球、内角低めへのシンカー。
バントするには難しい球だ。
だがバスターをするには、バットを最短距離で出せば良いのでやりやすい。
何とかバットに当てた。
一塁ランナー、二塁ランナーはスタートを切っている。
そして打球は前進しているサードの横を抜け、そして何とショートの横もうまい具合に抜けた。
外野は前進守備だったので、レフトが突っ込んできて、バックホームしてきた。
二塁ランナーはそれほど足が速くない高台捕手なので、三塁ストップ。
兎にも角にも僕にとっては、14打席ぶりのヒットだ。
ようやくトンネルを抜けた…。
バッターエンドランのサインが出たので、余計な事を考えずに無心でバットを振ったのが良い結果に繋がったのだろう。
これでノーアウト満塁のチャンス。
2番は伊勢原選手。
ワンボール、ワンストライクからの3球目をきっちりとライトに打ち上げた。
三塁の高台捕手がホームインし、先取点を奪った。
更に岸選手もセンター前ヒットでつなぎ、ワンアウト満塁の場面でバッターは頼れる4番の岡村選手。
東京チャリオッツは当然ダブルプレーシフトを敷いている。
岡村選手はワンボール、ツーストライクと追い込まれ、4球目。
ショートへボテボテのゴロが飛んだ。
これはホームもセカンドも間に合わない。
ショートの境選手は懸命にダッシュし、一塁に投げた。
三塁ランナーはホームインし、一塁はアウト。
そして僕は三塁に到達してもスピードを緩めずに三塁を回った。
一塁の砂川選手は慌ててホームに投げてきた。
僕はホームベースを回り込むようにして、手でホームベースに触れに行った。
送球が来たがやや高い。
一条捕手が捕球し、タッチに来た。
僕はうまくタッチをかわし、ホームベースに触れた。
判定はもちろんセーフ。
東京チャリオッツベンチはリクエストしようとしたが、一条捕手がそれを止めた。
きっと自分でもタッチが空振りしたことがわかっていたのだろう。
これで3対0。俄然有利になった。
僕はガッツポーズしながら、ベンチに戻った。
ベンチ内も球場内の泉州ブラックスファンも湧いている。
僕はベンチに座り、気持ちよくタオルで汗を拭った。
これでようやくスランプを脱出できそうな気がする。
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