第515話 シーズン序盤の諸々
「どうだった?」
京阪球場に着き、ロッカールームに入ると、谷口と五香選手が早速やって来た。
「ああポスティング、認めてもらったよ。
タイトル獲得が条件だけどな」
「タイトル?
それは実質的に無理だろう」
「いや、そうとも限らないさ。
全力を尽くすよ」
「タイトルを取れなかったら、残留か?」
五香選手が口を開いた。
「いや、タイトル取れなかったら、トレードだってさ」
「はあ?」
二人共驚いたようだった。
「それはつまり来季は札幌ホワイトベアーズには残らないということか?」
「まあそういう事になるな」
谷口と五香選手は驚いたように、顔を見合わせていた。
しかし考えてみると、静岡オーシャンズに3年、泉州ブラックスに3年半、そして札幌ホワイトベアーズも恐らく3年半。
約3年周期でチームを変わることになる。
まるでサラリーマンの異動みたいだ。
(私は同じ部署に7年以上いますが、何か?:作者より)
その日のスポーツ新聞では、結構僕のことを取り上げていた。
「無謀!?、札幌ホワイトベアーズ高橋、メジャー挑戦宣言」とか「無鉄砲極まる、札幌高橋、メジャーチャレンジ⁉」とか。
無謀と言われようと、無鉄砲と言われようと、バカ、アホ、マヌケと言われようと、僕の野球人生は僕のものだ。
引退時に後悔だけはしたくない。
その日の京阪ジャガーズとの第2戦目。
僕は1番ショートでスタメンを告げられた。
大平監督を始め、首脳陣は僕と球団の話は既に聞いているだろう。
つまり確実に来季はいないわけだから、僕が成績を残せなければ、すぐに他の選手を使うだろう。
今シーズン、試合に出続けるためには、成績を残し続けるしか無い。
次の試合、京阪ジャガーズの先発は、右のエースの車谷投手だった。
僕はこの試合も5打数2安打と、トップバッターとしての役割を果たした。
1試合、1試合、全力を尽くす。
きっとそれが結果につながっていくはず。
僕は自分自身、これまで思っていた以上に力が湧いてくるのを感じた。
それから少し時間が経ち、ゴールデンウィークがやってきた。
早いもので開幕して、1ヶ月経つ。
僕は開幕からずっとスタメン出場を続けている。
ここまでチーム全試合の26試合に出場し、98打数31安打、打率.316、ホームラン1本、打点7、盗塁8(盗塁死1)。
打率はリーグ5位につけており、盗塁もリーグ2位タイだ。
つまりどちらもタイトル獲得に向けて、順調なスタートを切っている。
もし数字を落とせば、試合に出られなくなるという危機感が、これまで以上にある。
そういう意味では意識の面で、一皮むけたのかもしれない。
札幌ホワイトベアーズは現時点で首位に立っている。
と言っても、2位京阪ジャガーズとはわずか0.5ゲーム差、3位川崎ライツとも1.0ゲーム差であり、三つ巴の混戦となっている。
今シーズン、札幌ホワイトベアーズが首位に立っている要因として、まず投手陣は中継ぎ、抑えのKLDSが安定している事が挙げられる。
先発が5回までリードを保って投げ切れば、高い確率で勝利できる。
これは先発投手にとって、心強いだろう。
そして打撃陣も好調で、リーグの打率ランキングには、5位に僕(.316)、7位に湯川選手(.305)、9位に下山選手(.295)、10位に谷口(.292)の4人が入っている。
特に谷口は今シーズン既に5本のホームランを打っており、最近は3番ないし5番に座ることも増えてきた。
打撃陣で心配なのは、道岡選手であり、打率2割台前半(.237)と苦しんでいる。
また新外国人のキング選手も打率.210、ホームラン0本と期待に答えられていない。
今日は、アウェーでの4位岡山ハイパーズ3連戦だ。
岡山ハイパーズは現在4位であるが、首位の札幌ホワイトベアーズとは4.0ゲーム離れている。
ちなみに5位熊本ファイアーズ(首位と4.5ゲーム差)、6位仙台ブルーリーブス(首位と5.0ゲーム差)とはあまり差がなく、下位3チームも1ゲーム差内に引きめき合っている。
今日の試合のスタメンは以下のとおり。
1 高橋(ショート)
2 湯川(セカンド)
3 谷口(レフト)
4 ダンカン(ファースト)
5 下山(センター)
6 道岡(サード)
7 岡谷(ライト)
8 上杉(キャッチャー)
9 五香(ピッチャー)
今日はキング選手がスタメンから外れ、代わりにベテランの岡谷選手がライトに入った。
また先発は五香投手。
中継ぎ、敗戦処理では投げているが、先発は今季初である。
結果を残して、先発ローテーションに残って欲しい。
スポンサー会社のお偉いさんの始球式が終わり、プレーボールがかかった。
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