第494話 足寄より

 北海道はでっかいどう。

 もはや死語であるし、人が言うのを聞くとイラッとする。


 しかしながら実際、北海道を移動すると心からそれを実感する。

 今僕は、鬼頭投手と十勝の足寄(あしょろ)という町に向かっている。

 僕と鬼頭投手は今年の足寄町の応援大使に任命されているので、そのイベント出席のためだ。

 ちなみに昨年は北海道北部のオホーツク海沿岸の浜頓別町だった。


 足寄町には、まず札幌から特急列車で2時間半くらいかけて、帯広に行く。

 そこから足寄町までは車で約1時間半ということだ。

 十数年前まではふるさと銀河線という、第三セクターの鉄道が通じていたらしいが、廃線になり、今は鉄道は通じていない。


「足寄って、町の規模の割に有名人を何人も出しているんですよ」

 同行して頂いた役場の職員の方が教えてくれた。

 その足寄町出身の有名人の名前を聞くと、確かに僕が知っている方もいた。

 

「足寄町は以前は日本で1番面積の広い市町村だったんです。

 今でも町の中では日本最大の面積を誇ります」

 へぇー、そうなんだ。

 ちなみに1位は岐阜県の高山市らしい。

 合併により広くなったそうだ。

 

「あとラワンブキというのも、足寄町の名産として有名なんです」

「ラワンブキですか。それは何ですか?」

「フキの一種なんですけど、草丈が2〜3mくらいになるんです」

「そんなにですか?

 僕の身長よりも高いですね」

 後で人と並んだ写真を見せて頂いたが、確かに大きかった。

 茎も10cmくらいになるそうだ。


「あとはオンネトーといって、北海道3大秘湖に数えられる神秘的な湖もあります。

 季節や時間によって、見える色が変わるんです。

 いつか機会があれば是非、見に行って下さい」

 

 へぇー、今回まで足寄町の事は全くというほど知らなかったが、色々あるものだ。

 あとインターネット上でプロ野球を題材にした、野球小説を書いている某作者が、子供の頃住んでいたという、どうでも良い、余計な、くだらない情報もあった。

 

 北海道は面積が広いだけあって、場所によって気候も違うし、自治体ごとに色々な名物、名産がある。

 また、北海道は冬はどこでも雪が降るのかと思いきや、多い地域と少ない地域があるそうだ。

 足寄町の冬は気温は低いが、雪の量はそれほど多くはないらしい。

 引退したら、ゆっくりと北海道を旅するのも良いな、と思う。

 至るところに温泉もあるし。


「さあ、着きました」

 会場となる公民館は「歓迎、鬼頭投手、高橋選手」という大きな垂れ幕がかかっていた。

 

 車を降りると、札幌ホワイトベアーズの球団歌が流れていた。

 そしてロープで仕切られていたが、数百人の地元の方が拍手で迎えてくれた。


 まずは地元のリトルリーグの子どもたちを対象とした野球教室。

 その後、公民館でサイン会とトークショーが行われる。

 駐車場からグラウンドまでは数十メートルくらいだと思うが、ロープで仕切られた道の両側はファンの方で埋め尽くされていた。


「寅さーん」

「りゅーすけー」

「バカはしー」

 声援を受けた。

 誰だ、最後に言ったのは…。

 まあ空耳かもしれない。

 いや空耳に違いない。

 

 野球教室は町営の野球場で行われた。

 付近の市町村からも子どもたちが集まり、百人近くいた。

 みんな純粋なキラキラとした目をしている。

 この子達が将来の野球界を担うと思うと、教える側としても熱が入る。


 もう少ししたら、我が息子である翔斗にも野球を教えてあげよう。

 将来、大リーグで何十億円も稼いでもらわないといけないし。

 僕の老後は息子にかかっている。


 野球教室の後は公民館へ移動し、トークショーだ。

 司会の女性アナウンサーを交えて、洒脱で知的なトークを繰り広げた。


 その後は恒例の質問コーナーだ。

 昨年は変な質問が多かったが、今回はまともな質問が多かった。

「どうしたら野球がうまくなりますか」とか、「仲の良い選手は誰ですか」とか。


 唯一答えに窮したのが、鬼頭投手に対しての質問で、「どうして寅さんに似ているんですか?」というのがあった。

「さあ、何ででしょうね」と鬼頭投手も苦笑しながら、答えていた。


 このようなイベントに赴くと、普段球場に気軽に来れない方々にも応援して頂いている、と実感する。

 是非、今後もこのような取り組みを続けて欲しい。

 

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