第281話 忘年会②(浪速の愚連隊編)

 静岡オーシャンズのドラフト同期組の忘年会の翌日、恒例の高校時代の同期との忘年会があった。

 これで今年も終わり。

 さあ、来年も頑張ろう。


 …

 ……

 ………

 お久しぶりです。

 日本中の期待を背負って、来季は大リーグへ挑戦する、山崎です。

 ところで第175話で、時々スピンオフとして、「ドラフト1位で入団して」を掲載すると、作者と約束していたのはどうなったのでしょうか。

 いっぱいネタを用意していたのに、音沙汰が無いんですが…。

 

 さて、ついに僕は希望通り大リーグ移籍に向けた、ポスティング申請を球団に認めてもらえました。

 そしてな、何とニューヨークファィアバーズと7年で総額100億円で契約を結ぶことになりました。

 

 正直、全く実感が湧きません。

 愛すべきモブキャラの高橋隆介の年俸の何年分でしょうか。

 誤解が無いように言っておきますが、僕はお金にはあまり執着がありません。

 

 子供の頃、図鑑で見たジャガーにいつか乗りたい、という夢はありましたが、それも早いうちに叶ったので欲しいものは特にありません。

 もちろん、年俸の金額はプロとしての評価の一つではあります。

 

 だけど、僕はそれ以上に野球で真剣勝負ができることが嬉しくて仕方がありません。

 日本にも良いバッターは多くおり、熱い勝負をすることは出来ますが(普段は大して打たないのに、僕の投げる時だけ、意地になって、やたら打つ奴もいる)、大リーグは更にチーム数も増え、パワーのあるバッターも多いことでしょう。

 だからプレッシャーもありますが、今はワクワクする気持ちが勝っています。

 ということで、突然ですが、「ドラフト7位で入団して」は前回で終わり…、痛てぇよ、マジ蹴りすんなよ。


……

………


 忘年会の最中、山崎の姿が見えなくなったので、どこへ行ったかと思ったら、別の部屋でカメラに向かって何か語っている山崎を見つけた。


 何を独りで喋っているかと思いきや、勝手に主役を変えようとしていたので、頭に蹴りを入れてやった次第だ。

 

「てめぇ、1億ドルの身体に何するんだ」

「ほう、お前の身体は金でできているのか。

 じゃあ指の1、2本…(以下、自主規制)」


 ということで、今回も高校時代の愚連隊との忘年会は盛り上がった。

 結衣は子供の世話でもちろん来られない。

 平井や葛西からは子供も連れて来れば良い、と言ってもらったが、子供の教育上良くないだろう。

 物心がつくようになったら、「なってはいけない大人の見本」としては有効かもしれないが。


 山崎の成績は既に述べたので置いといて、今季、金銭トレードで新潟コンドルズへ移籍した平井は、二軍降格を経て、シーズン終盤に一軍に上がった。

 そして消化試合ではあったが、立て続けに3本のホームランを放ち、来季に向けて実力の片鱗は見せた。


 新潟コンドルズは長距離砲が不足しているので、もう少し安定感が増せば、出場機会は増えるかもしれない。


 大卒、社会人から新潟コンドルズへと入団した、プロ1年目の葛西はシーズン当初は素晴らしい活躍を見せたが、そこはプロ。

 徹底的に弱点を攻められ、数字を落とし、二軍に降格した。

 

 結局、52試合に出場し、打率.205、ホームラン0本に終わった。

 本人は淡々としているが、内心は来季に向けて燃えるものがあるだろう。


 忘年会での山崎は相変わらずであった。

 ニューヨークファィアバーズと大型契約を結んだことを鼻にかけない…わけは無いが、以前と変わらずイジられキャラのままだった。

 日本球界で無双しようが、大リーガーになろうが、僕らにとっての山崎は高校時代からの大事な仲間である。


 不思議なことに高校時代のチームメートにこうして会うと、いつもあの時代に戻ったような感覚を覚える。

 立場や活躍するフィールドが違えど、どこまで行っても僕らは仲間なのだと思う。


 また来年も会えるといいな。

 4次会が終わり、空の彼方がうっすらと白くなり始めた中、三々五々散っていった仲間たちの後ろ姿を見送りながら、そう思った。


 なお家に帰ったら、この日結衣はずっと不機嫌だった…。

 しょうがないんだよ。平井や柳谷が帰してくれなくてさ。

 

 

 

 

 


 

 


 

 

 

 

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