第554話 激しい追い上げ

 竜崎投手は右投げなので、僕の方を向いている。

 僕は大きくリードを取って、挑発した。

 ほれほれ、投げて来い。


 竜崎投手はこっちを睨んでいる。

 そして牽制球が来た。

 僕はもちろん即座に三塁に戻った。

 

 そして竜崎投手がセットポジションに入ると、また大きくリードを取った。

 また牽制球が来た。

 すぐに三塁に戻った。


 すると今度は西野選手が大きくリードを取った。

 それを見て、竜崎投手は素早く一塁に投げた。

 すると西野選手は逆をつかれ、挟まれてしまった。

 

 一塁の下條選手が二塁に投げた瞬間、僕はホームに突っ込んだ。

 二塁の浅井選手はそれを見て、ホームに投げてきたが、僕はうまく回り込むように滑り込んだ。

 判定はセーフ。

 

 その間に西野選手は二塁に到達した。

 してやったり。

 これでまた1点を返した。

 スコアは11対7。

 両先発の顔ぶれから、投手戦が予想されたが、意外な試合展開になってきた。


 そして下山選手はしぶとく一二塁間をゴロで破り、ノーアウト一、三塁となった。

 ここで迎えるのは4番のダンカン選手。

 もしここで一発出たら、点差は1点差となる。


 京阪ジャガーズの内野陣はマウンドに集まり、ベンチからは村野監督が出てきて、ピッチャー交替を告げた。

 ここからは勝ちパターンの継投に入るようだ。

 プロの洗礼を浴びた竜野投手はがっくりと頭を垂れ、ベンチに下がっていった。


 そして替わった金山投手から、ダンカン選手は犠牲フライを放ち、もう1点加点した。

 これでこの回のノルマは達成である。


 ワンアウト一塁でバッターは6番の谷口。

 言わずと知れたジミーズの一員である。


 そして何を思ったか、初球をバントした。

 金山投手は意表をつかれようだったが、すぐに一塁に送球した。

 狙いは面白かったが、判定はアウト。

 結果として送りバントにはなった。


 これでツーアウト二塁。

 続くブランドン選手の打棒に期待である。

 スコアは11対8。

 ここでもしもう1点取れたら、試合はどうなるかわからない…かもしれない。


 カッキーン。

 そんな事を考えていたら、快音が響き渡った。

 嘘だろ?


 打球は見事にレフトスタンドに飛び込んでいた。

 おいおいこれで1点だよ。

 球場内はお祭り騒ぎである。

 ワンサイドゲームと思っていたのが、11対10。

 1点差まで詰め寄った。


 続くバッターは7番の非力な浅利選手である。

 浅利選手も地味なタイプの選手なので、ジミーズに入る資格は充分にある。

 今度お誘いしよう。

 そんな事を考えていたら、またしても快音が響き渡った。


 打球はセンターの頭を越え、フェンスにまで到達していた。

 スリーベースヒット。


 続くバッターは武田捕手であるが、こうなると札幌ホワイトベアーズベンチは動く。

 代打として、打撃に秀でる上杉捕手を送った。 


 京阪ジャガーズはマウンドにセットアッパーの造田投手を送った。

 だが勢いづく札幌ホワイトベアーズ打線を止めることはできない。


 初球をフルスイングした上杉捕手の打球は小さな弧を描いて、セカンドの後方に落ちた。

 前進守備なら捕れていたかもしれないが、普通の守備隊形だったこと、そして上杉捕手のスイングが大きかったため、センターの中道選手の第一歩が遅れた事が、京阪ジャガーズにとって災いした。


 これで11対11の同点。

 何て試合だ。

 僕は両手を握りしめ、仰け反りながら天を仰いだ。


 続くバッターはピッチャーの打順だから代打か。

 そう思ったが、ピッチャーは二刀流もどきのミスター中途半端、五香選手だった。


 二刀流をやっているだけあって、打力はそこそこある。

 下手に代打を出すよりも、極稀に当たれば飛ぶ五香選手の打棒に期待ということだろう。


 そしてツーボール、ワンストライクからの4球目。

 高めへ抜けたチェンジアップを捉えた。

 打球はそのままレフトのポール際に飛び込んだ。


 だが判定はファール。

 しかしながらスタンドはザワザワしており、ベンチから大平監督が飛び出し、リクエストした。

 

 

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