第555話 激戦の結果
球場内のファン、そして両軍ベンチは固唾をのんで、大型ビジョンを見つめている。
ホームランかファールでは大きな違いだ。
さてさてどうなるのかな。
ワクワク、ドキドキ。
「おい、さてさてどうなるのかな、ワクワク、ドキドキじゃないだろ。
次はお前の打順だろ」
麻生コーチの言葉で我に返った。
思わず口に出していたみたいだ。
僕は急いでヘルメットを被り、ネクストバッターズサークルに向かった。
中々審判団が出てこない。
まあ試合の趨勢を決めるかもしれない大事な判定だ。
審判団も慎重を期しているのだろう。
ようやく審判団が出てきた。
そして球審が腕を回している。
ホームランだ。
五香選手は大きくガッツポーズして、ベースを回りだした。
しかしとんでもない試合になってきた。
これで13対11である。
僕もこの流れに乗って、ヒットを稼がせてもらおうかな。
そんな邪な気持ちでバッターボックスに入ったのが悪かったか、初球を捉えた打球は、ライナーでショートのグラブに飛び込んでいた。
チッ、良い当たりだったのに。
作者も555話というキリの良い話数なんだから、記念に僕を活躍させてくれても良いのではないだろうか。
本当に気が利かないんだから…。
奇跡の大逆転を果たしたものの、試合はまだ終わっていない。
油断すると、ここから再逆転される可能性もあるのだ。
8回表のマウンドには、ルーカス投手が上がった。
しかしこのまま勝ったら誰がヒーローインタビューを受けるのだろうか。
このまま試合が終わると、勝ち投手は五香選手となる。
しかし勝ち越しホームランを打ったものの、投球内容は2回3失点である。
ヒーローとしては微妙ではないだろうか。
点の取り合いになり、やや弛緩した雰囲気が漂っている。
ここはスパッと三者凡退で斬って、試合を引き締めたいところだ。
ということで先頭バッターの鋭い打球が三遊間を襲ったが、そこにいたのはご存知オールスター選出の名手。
落ち着いてショートバウンドの難しい打球をグラブに納め、すかさず一塁に送球した。
ナイスプレー。
球場内から大きな拍手が湧き上がった。
どうもどうも。
このくらいお安い御用です。
僕はさも当たり前の顔をして、守備位置に戻った。
そしてこの回はルーカス投手が三者凡退に抑え、9回表も新藤投手が1失点に抑えた(?)。
結果として、13対12で勝利した。
試合時間は4時間48分。
とても疲れた上に、明日はデーゲームだから辛い。
だがまあ、負けた京阪ジャガーズの方がダメージが大きいだろう。
そしてヒーローインタビューは、タイムリーヒットとホームランを放ったブランドン選手、そして勝ち越しホームランを放ち、また棚ぼたの勝利投手のとなった五香選手が選ばれた。
僕も先制ホームランや、大逆転劇の口火を切るスリーベースヒットを打ったし、好守備もあったので、ヒーローインタビューに呼ばれてもおかしくないと思うが、声はかからなかった。
(エラーの記憶は無いのでしょうか?、作者より)
ベンチに座って、広報の新川さんの背中を凝視したが、思いは届かなかったようだ。
「放送席、放送席。
今日のヒーローは大逆転の立役者、ブランドン選手と、打っては勝ち越しホームラン、投げては勝ち投手となった、五香選手です」
お立ち台に上がった2人は晴れやかな顔をしている。
でも僕は忘れていない。
五香選手は投手としては3点を失っていることを。
2回3失点でヒーローインタビューを受けるなんて、前代未聞では無いだろうか。
ヒーローインタビュー自体は当たり障りのない内容に終始し、あまり面白くなかったので、割愛する。
しかし8点差を逆転するなんて、過去にあったのだろうか。
(日本では10点差の逆転が最大みたいですね。作者より)
今日の試合を見に来たお客さんは良いものを見られたのではないだろうか。
そう考えながら、僕は愛車のぽるしぇ号で帰路についた。
時計を見ると、すでに午前零時近く。
明日はデーゲームなので、明朝9時には起きないと…。
……………………………………………………………
ついに555話まで来ました。
いつも読んで下さり、ありがとうございます。
またコメント頂いても返信せず、申し訳ありません。
必ず読ませて頂いております。
555話ということは約1年半、毎日更新ということですね。
我ながら恐ろしいです。
次の目標は777話です。
無理に話を引っ張るつもりはありませんが、まだまだ構想があったりなかったり。
マイペースで続けていければと思っています。
引き続き、よろしくお願いします。
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