第563話 オールスター第2戦

 オールスター2戦目は、東京チャリオッツの本拠地で行われる。

 よって第一戦の翌朝に飛行機で、東京へ移動した。


 昨夜というか今朝というか、何だかんだで、4時過ぎまで起きていたので、まだ眠い。

 だから飛行機の中では爆睡してしまった。


 飛行機に乗り込んだ瞬間寝てしまったようで、気がついたときには空港の滑走路にいた。

 あれ?、まだ飛んでいないのか、と思ったら、東京国際空港という文字が見えた。

 まるで瞬間移動だ。

 ふと見ると、座席の前に付箋が貼ってあった。

 

 「ぐっすりとお休みだったので、お飲み物のご提供を控えさせて頂きました。

 お目覚めになって、お飲み物をご所望でしたらお知らせください。

 また今日の試合も頑張ってください。

 応援しています」

 

 とても綺麗な字でこのように書いてあった。

 客室乗務員の方が書いてくれたのだ。

 暖かいメッセージに、ちょっと嬉しいと言うか、照れくさいと言うか、ホッコリと言うか、まあそんな気持ちになった。


 飛行機を降りると、出口までの通路で、谷口と一緒になった。

 僕と谷口は腐れ縁みたいなものなので、示し合わせて同じ便に乗るほど仲良くはない。

 偶然、同じ便だったのだ。

 

「よお、バカ面晒して気持ちよく寝ていたな。

 トイレに行くときに見たけど、大きな口を開けて寝ていたぞ」

「そりゃ、試合で疲れているからな」

 

「ケッ、試合じゃなくて飲み疲れだろ。

 昨夜何時まで飲んでいたんだ?」

「うーん、家帰ったら3時半だった…」

「自業自得だな。

 ベンチで試合中寝るなよ」


 昨日のMVPの中道選手を誘い出して、寿司をご馳走になったまでは良かったが、そのままでは済まなかった。


 つまり2次会、3次会と称して、すすき野の店をハシゴしたのだ。

 僕は寿司の後、逃げ出そうとしたが、逆に中道選手や片倉選手に捕まってしまった。


 そしてすすき野を案内させられたのだ。

 僕はあまりすすき野の店を知らないが、かって泉州ブラックスが交流戦で遠征してきた際に、岸選手と高台捕手のちょいワルもとい、極悪コンビにすすき野を案内させられた事があるので、知っている店に連れて行った。

 中道選手は酒が強く、いくら飲んでも顔色が全く変わらなかった。

 

「明日の試合に差し支えありますし、もうそろそろ帰りませんか?」と言ったが、「誘ったのはお前だろう。

 最後まで責任もって付き合え」と言われ、逃げられなかった…。


 こういうのをミイラ取りがミイラになると言うのだろうか。

(多分違います。作者より)


 というわけで球場に入っても、酒が抜けず、顔色が悪かった。

 僕はあまり酒が強くないので、特にシーズン中は宿酔いするほど飲んだことは無い。


 フラフラと廊下を歩いていると、大平監督とすれ違った。

「おう、どうした顔色悪いな」

「はい、ちょっと疲れているみたいです」

「単なる飲み疲れだろ。

 ポール間ダッシュを10往復してこい。

 目が覚めるぞ」

 

 どうやら谷口がチクったようだ。

 あの野郎。

 あいつは高校の風紀委員か…。

 僕はフラフラとなりながら、ポール間ダッシュを10本した。

 不思議なもので、水を飲んで汗をかくと少しは具合が悪いのが治ってきた。

 

 今日はベンチスタート。

 出場したとしても、代打か代走だろう。

 ベンチでゆっくりさせてもらおう。


 試合が始まった。

 今日は谷口は7番レフトでスタメンだ。

 すると第2打席で2試合連続のホームランを打ちやがった。


 普段は朴念仁の谷口だが、さすがに嬉しいようで、ベンチに帰ってきてもはしゃいでいた。

 ようござんしたね。


 結局この試合、僕は7回の守備から出場し、1打数ノーヒットに終わった。(セカンドフライ)


 明日は移動日で明後日からは、いよいよシーズン後半戦が始まる。

 今日は早くホテルに帰って、シーズン再開に備えないと…。

 そう考えて、球場から逃げ出そうとしたら、また中道選手達に掴まった…。


 ああ、明日も宿酔い確定か…。

 僕は歌舞伎町に向かう護送車、もといタクシーの中で肩を落とした…。

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