第591話 判定は如何に?
京阪ジャガーズの守備隊系を見ると、先程の打席と同様にサードがかなり前に来ており、セーフティバントを警戒している。
京阪ジャガーズのマウンドは、7回から宗投手が上がっている。
強いストレートが武器の投手だ。
初球勝負すると、僕は決めていた。
これが札幌ホワイトベアーズでの最後の打席になる。
最後は思い切ったバッティングをしよう。
そう心に決めていた。
皆さん、ありがとう。
このチームに来て、僕はレギュラーを掴み、プロ野球選手らしい暮らしもさせてもらった。
大平監督をはじめとした首脳陣、チームメート、そしてチームスタッフの皆さん、ファンの方々、そして僕を支えてくれた身内(妹を除く)。
皆さんへの想いをこの一球にかけたいと思う。
来た球を自分らしいスイングで打ってやろう。
スタンドからは僕の応援歌、青き旋風、髙橋隆介というのが流れている。
泉州ブラックスで使用していた曲を、応援団同士で引き継いでくれたものだ。
調子が良い時も悪い時も、この歌には本当に勇気をもらった。
本当にありがとうございます。
初球。
外角低めへのストレート。
難しい球だ。
だが僕にはプロ入り以来磨いてきた、右打ちの技術がある。
僕はライト方向を意識して振り抜いた。
打球は一、二塁間を鋭いライナーで抜けた。
ライト前へのヒット。
僕は一塁ベース上で、軽くガッツポーズした。
そしてベンチのサインを見ると、グリーンライト。
自分の判断で好きなようにしろ、ということだ。
ありがたい。
後は自己責任だ。
バッターは先ほどホームランを打った光村選手。
あまり器用なバッターでは無いので、追い込まれる前に打ちたい、というスタイルのバッターだ。
先ほどの打席後は心の中で悪態をついたが、光村選手も少ないチャンスを活かそうと必死なのはわかっている。
そして牽制球を3球受けてからの、初球。
僕は思い切ってスタートを切った。
あとは野となれ、山となれ。
二塁ベースだけを目指す。
といいつつ横目で、バッターの様子を見た。
光村選手が豪快に空振りしたのが視界に入った。
決して僕を援護しようとしたわけではない。
単に初球のストレートを狙いに行き、空振りしただけだ。
キャッチャーからの送球がくる。
そして僕は滑り込む。
足元にタッチが来たのと、二塁ベースに触れたのはほぼ同時に感じた。
自分の感覚としては…、セーフかな。
だが二塁審判はアウトのジェスチャーをしている。
もちろん僕はベンチにリクエストを要求した。
確信はないけど、わずかに僕がベースにタッチするほうが早かったと思う。多分。きっと。
大平監督がリクエストし、審判団がバックスペースに下がった。
さっきのリプレー映像が、大型ビジョンに流れている。
球場内の多くを占める京阪ジャガーズファンの間から、どよめきが上がった。
幾つかのアングルからの映像が流れ、上から撮った映像で僕は確信した。
セーフだ。
中々審判団がでてこない。
もし判定どおりなら、すぐに出てくるだろうから、審判団も判断に迷っているのだろう。
やがて審判が出てきた。
責任審判の方の顔は、眼力があり、どことなくあの有名司会者を連想させる。
そしてゆっくりとホームベース付近まで歩いてきている。
僕は子供の頃に見たクイズ番組でこういうのがあったな、と思い出した。
ためにためて、正解とか不正解というやつだ。
まだ審判は判定をしない。
いい加減に読者も呆れているぞ。
まあ普通に読み飛ばすんだろうけど。
さあ、判定はいかに?
文字数が多くなってきたので、続きは次回…。
…
……
………
「セーフ」
ようやく責任審判が判定した。
ヨッシャー。
僕は二塁ベース上で大きくガッツポーズした。
これで盗塁王争いで、1つリードした。
ずっと追いかける立場だったので、追われる立場になるのは久しぶりだ。
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