第168話 後半戦初打席

 ホテルを出ると、真夏の日差しが容赦なく照りつけてきた。

 僕は左手をひたいにあて、太陽を見上げた。

 とても眩しい。

 今日も暑くなりそうだ。


 チームバスに乗り込み、四国アイランズの本拠地である高松ドームに向かった。

 

 今日の四国アイランズの予告先発は、ここまで7勝を挙げているブラウン投手。

 速球とツーシーム主体の左腕で、スプリット、カーブも使う。

 コントロールはあまり良くない。

 

 今日の泉州ブラックスのスタメンは次のとおりである。

 

 1 岸(センター)

 2 山形(レフト)

 3 水谷(サード)

 4 岡村(ファースト)

 5 デュラン(指名打者)

 6 宮前(ライト)

 7 伊勢原(ショート)

 8 高台(キャッチャー)

 9 高橋隆(セカンド)

 ピッチャー ジョーンズ


 試合が始まった。

 アウェーなので、泉州ブラックスが先行であり、1番の岸選手が打席に入った。 

 ブラウン投手は内角と外角の使い分けで打者を打ち取るタイプである。


 岸選手への初球。

 内角低目、膝元へのストレート。

 岸選手はうまく避けた。

 これでワンボール。


 そして2球目。

 外角へのツーシーム。

 遠く見えたのか、岸選手は見送ったが、ストライク。


 そして3球目。今度は内角低めへのツーシーム。

 岸選手は手を出して、平凡なサードゴロ。


 そう、これがブラウン投手の持ち味である。

 つまり内角と外角を投げ分けることによって、打者の距離感を狂わせ、打ち取るのだ。

 球威もあるので、打者にとっては非常に厄介な投手である。


 2番の山形選手は選球眼がとても良いが、スリーボール、ツーストライクからの外角への直球を見送り、見逃しの三振に倒れた。


 3番の水谷選手も内角攻めの後の外角へのツーシームに手を出し、セカンドゴロ。

 この回は三者凡退に終わった。


 泉州ブラックスの先発は、長身のジョーンズ投手。

 これまた三者凡退に打ち取った。


 2回表は、4番の岡村選手からの打順であったが、簡単に三人で攻撃が終わった。


 2回裏もヒットを1本打たれたものの、ジョーンズ投手は0点に抑えた。

 次の打席、僕に打順が回ってくる。


 3回表、伊勢原選手、高台捕手と連続で三振し、僕の打順が回ってきた。

 ランナーもいないし、ここは一発狙うか。

 そんなことを考えていたら、釜谷バッティングコーチに呼ばれた。

 

「分かっていると思うが、ここはコンパクトに打てよ。一発狙うとか考えるなよ」

 エスパーか?


 僕は久し振りの1軍の打席に入った。

 ブラウン投手は身長は180㎝くらいと、外国人選手の中では長身では無いが、がっしりとした筋肉質の体格をしている。

 顔もごつく、威圧感がある。

 何となく仁王像を連想させる風貌だ。


 初球。

 内角低目のへのストレート。

 僕は悠々と見送った。

 ワンボール。


 2球目。

 外角へのツーシーム。

 これも見送った。

 ツーボール。


 3球目。

 外角へのストレート。

 これは入っている。

 バットの先で当てて、ファール。

 ツーボール、ワンストライク。


 そして4球目。

 次は内角に来ると読んだ。

 予想通り、内角高めへのストレート。

 僕は腕を畳み、うまくレフト線に弾き返した。


 打球はサードの香美選手の横を抜けて、レフト線上に落ちた。

 フェア。

 僕は一塁を蹴って、二塁に向かった。

 ツーベースヒット。

 ブラウン投手が球審からボールを受け取りながら、僕を見て睨んでいる。

 別に僕は悪いことをしていない。睨まれても困る。


 そして次の岸選手がフルカウントからの6球目をセンターへ弾き返し、僕は三塁を回って先制のホームを踏んだ。


 ブラウン投手は何かを叫びながら、マウンドを強く蹴っている。

 結構、感情の起伏が激しい選手のようだ。


 試合は泉州ブラックスが1点リードのまま、5回表を迎えた。

 

  

 

 

 

 

  

 

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