第352話 オールスター第二戦
オールスター第二戦は、懐かしき泉州ブラックスの本拠地の泉州ブラックスタジアムで行われる。
あれから約1年か…。
トレードを通告されたのが、7月30日だったから、正確には1年経っていない。
だが、かなり長い時間が経ったようにも感じる。
懐かしいと思う一方、もう僕のホーム球場ではないという寂しさも改めて覚えた。
今日の試合もベンチ警備の予定だ。
ショートのスタメンは、昨日は京阪ジャガーズの木崎選手だったが、今日は仙台ブルーリーブスの片倉選手だ。
ファン投票で接戦だった2人がスタメンを張るのは当然だろう。
でも僕も出場機会があれば良いな…。
泉州ブラックスタジアムでの試合だし…。
試合開始2時間前となり、お客さんが入場してきた。
観客席を見ていると、チラホラ僕の背番号58と名前が入ったタオルを掲げてくれているファンの方が目に入った。
色を見ると、泉州ブラックス時代のもののようだ。
こうしてチームが変わっても応援してくれる方がいる。
本当に嬉しいし、ありがたい。とても励みになる。
今日はシーリーグが先行、スカイリーグが後攻だ。
スカイリーグの先発は、四国アイランズの長岡投手。
対する我がシーリーグの先発は、京阪ジャガーズの車谷投手だ。
試合は昨日とは打って変わって、打撃戦になった。
1回表、シーリーグはいきなり3連打で1点を先制し、更にノーアウト一、三塁から4番の京阪ジャガーズの下條選手のタイムリーツーベースで更に2点を追加した。
しかしその裏、スカイリーグもソロホームラン2本で2点を返し、3対2となった。
その後も両軍とも点を取り合い、5回を終えた時点で6対6の同点となっていた。
こういう展開になると、僕の出番があるかも。
そう思いながら、試合展開を見守っていたが、なかなか僕には声はかからなかった。
そして試合は進み、9回裏まで来た。
点差は7対10で3点負けている。
僕は出番があるとしたら、守備か代走だと思っていたが、ここまで出番はなかった。
試合もツーアウトとなり、敗戦の空気が流れていたが、シーリーグはそこから粘り、ヒット2本で一、二塁のチャンスを作った。
ホームランが出れば同点の場面で、熊本ファイアーズの伊集院選手が打席に入った。
そこで村野監督に声をかけるかけられた。
「高橋、次代打だ」
え、この場面で?
でも伊集院選手が凡退したら、試合終了だ。
僕はとりあえず、ネクストバッターズサークルに向かった
次のバッターは仙台ブルーリーブスの片倉選手だが、今日はここまで無安打なので、僕が代打を告げられたのだろう。
よく見ると、野手で残っているのも僕だけだ。
残り物には福がある…かもしれない。
伊集院選手、頼みます。
僕に回して下さい。
その願いが通じたのか、レフト前ヒットで出塁した。
ありがとうございます。
もしここでホームランなんか打ったら、最優秀選手間違いなしだ。
もし凡退しても、オールスターだし、打率が下がることもない。
相手の守備体形は普通だ。
まあそうだろう。
ワンアウト取れば試合終了だし。
相手投手は、スカイリーグ屈指の抑えの切り札、中京パールスの都沢投手。
あのストレートをホームランを打てる気がしない。
もしあんな球をホームラン打てたら、きっと今頃軽く二桁ホームランを打っているだろう。
そして鋭く落ちるフォークも、都沢投手の代名詞だ。
ここでの僕の役割は後続につなぐことだろう。
大歓声、そして僕の応援歌を心地よく耳にしながら、リラックスしてバッターボックスに入った。
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