第250話 ピンチの後にはチャンスあり
試合には流れがある。
野球に関する格言で、ピンチの後にはチャンスありというものがある。
こういう時に早打ちして凡退すると、相手投手を助けてしまう。
3回裏は9番の山形選手からの打順だ。
山形選手はベテランの域に達する選手であり、それが良くわかっている。
この場面では決して早打ちはしない。
初球に絶好球が来ない限りは。
新宮投手の初球のスクリューボールがど真ん中に来た。
山形選手はこれを逃さず、思い切り引っ張った。
打球はライト線上に飛んでいる。
フェア。
山形選手は悠々と二塁に達した。
好球必打。さすがだ。
新宮投手も山形選手の特徴から初球からは振って来ないと思ったのかもしれない。
それを逆手に取った。
さてノーアウト二塁の大チャンスで迎えるバッターは、1番の宮前選手。
フルカウントまで粘り、フォアボールを勝ち取った。
これでノーアウト一、二塁。
迎えるバッターは2番の額賀選手。
額賀選手は初球をきっちりと三塁線ギリギリにバントを決め、ワンアウト二、三塁のチャンスとなった。
そしてバッターは3番の岸選手。
中京パールスの内野の守備体形はホームへのバックホーム体制だ。
かなりセカンドが前に来ている。
新宮投手はこの場面は内野ゴロを打たせたいので、徹底して低め勝負でくる。
そしてスリーボール、ワンストライクのカウントからフォアボールを選んだ。
これでワンアウト満塁の大チャンスで4番の岡村選手を迎えた。
岸選手への最後の投球は明らかなボールだったので、満塁策を取ったのかもしれない。
岡村選手は足はあまり速くないため、ゴロを打たせればダブルプレーの可能性もある。
そう考えたのかもしれない。
そして岡村選手は新宮投手のスクリューボールの前にセカンドゴロに倒れ、ダブルプレーとなってしまった。
うーん、絶好のチャンスだったが…。
そして4回表、またしても格言通り、児島投手はワンアウト二、三塁のピンチを背負ってしまった。
だがここも児島投手はセカンドの大ファインプレーにも助けられ、無失点で切り抜けた。
繰り返す。
セカンドの大ファインプレーに助けられ、無失点で切り抜けた。
ということで4回裏は、5番のデュラン選手からの打順なので、7番の僕にも打順が回る。
そしてデュラン選手はフォアボールで出塁し、6番の水谷選手のファーストゴロの間に二塁に進んだ。
ワンアウト二塁。追加点のチャンスで、迎えるバッターは先程チームの危機を救うファインプレーをしたセカンド。
つまり僕の打順だ。
さっきのプレーで気分はノリノリである。
従って難しい球でもヒットにできるような気がしている。
初球。
外角低めへのスクリューボール。
見逃せばボールかもしれない。
僕は流し打ちした。
打球は一塁線上に転がっている。
ファールかと思ったら、何とファーストベースに当たり、大きく弾み、ファーストの頭の上を超えた。
僕は一塁を蹴って、二塁に向かいながら、横目で打球の行方を追った。
打球はファールゾーンの壁に当たり、そしてライトがその処理にもたついている。
それを見て、一気に二塁ベースを蹴って三塁に進んだ。
送球が来たが、滑り込んでセーフ。
ラッキーなスリーベースヒットだ。
僕は三塁上で軽くガッツポーズをした。
ベンチも大盛り上がりである。
これで3対1。
しかもワンアウト三塁、追加点のチャンスだ。
バッターは頼れる8番の高台選手。
ちなみに頼れるとは野球のことではない。
良く奢ってくれるという意味だ。
その高台選手はあっさりと三球三振に倒れた。
やっぱりね。
これでツーアウト三塁で迎えるバッターは、俊足の山形選手。
またしても粘りに粘り、フォアボールを勝ち取った。
新宮投手はフルカウントから、ストライクを確信した球がボールと宣告され、天を仰いでいる。
これでツーアウトながら一塁、三塁のチャンスとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます