第519話 ファインプレーと高級寿司の関係性について

 今日のスタメンは以下の通り。


 1 高橋(ショート)

 2 湯川(セカンド)

 3 谷口(レフト)

 4 ダンカン(ファースト)

 5 下山(センター)

 6 道岡(サード)

 7 キング(ライト)

 8 上杉(キャッチャー)

 9 鈴鳴(ピッチャー)


 今日も作者は岡山ハイパーズ戦のスタメンをコピペして、7番と9番だけ書き換えたようだ。

 とは言え、今シーズン、札幌ホワイトベアーズが好調の要因は、何と言っても打線が活発な事に尽きる。

 そしてそれというのも、レギュラーが固定されているのが大きい。


 シーズン開始前は、名塚選手とか北畠選手とか、ライバルになりそうな新戦力の台頭もあったが、シーズンが始まると僕と湯川選手で二遊間は固定されている。


 僕は今シーズン、一試合たりともスタメンを譲る気はサラサラ無い。

 好不調の波が今シーズンはあまり無いのも、成長の証かもしれない。


 もちろん調子の良し悪しはどうしてもある。

 だが、悪い時は悪いなりに、粘ってフォアボールを選ぶとか、あえて軽く打って内野安打を狙うとか、そういう事ができるようになってきた。


 またプロ入り当初から取り組んできた、右打ちについても技術が向上しており、ヒットを広角に打つことができている。

 だから相手が左投手でも右投手でも、僕の打席では偏った守備シフトは敷かれないので、それが高打率につながっているのかもしれない。

 

 1回表、僕はショートの守備位置についた。

 平日のナイターなのに、球場内は超満員となっている。

 札幌ホワイトベアーズの本拠地とあって、7割位は札幌ホワイトベアーズファンだが、残りは京阪ジャガーズファンである。


 京阪ジャガーズファンは熱心なファンが多く、会社を休んでわざわざ北海道まで来ている人も多いそうだ。


 鈴鳴投手が投球練習をしている。

 見るからに重そうな球質だ。

 今日は内野への打球が多いかもしれない。

 僕は内野陣でボール回しをしながら、そう思った。


 1回の表、京阪ジャガーズの不動の先頭打者、中道選手が打席に立った。

 中道選手は身長170cmちょっとと小柄であるが、俊足であり、バットコントロールが上手い。


 そしてツーボール、ワンストライクからの4球目を打った打球は、ボテボテのゴロとなって、鈴鳴投手の横を抜け、僕の方に飛んできた。

 中道選手は俊足だから、僕は懸命にダッシュして、打球を捕球し、一塁に投げようとした。

 

「あっ」

 焦ったためか、ボールが手につかず、落としてしまった。

 記録はエラー…。

 

 あー、やってしまった…。

 僕は天を仰いだ。

 よりによって、初回の先頭打者、しかも俊足の中道選手を出してしまうとは…。

 僕はボールを鈴鳴投手に返しながら、掌を縦にして詫びた。

 鈴鳴投手は軽く頭を下げた。


 2番は同じく俊足の木崎選手である。

 バントも上手いし、ヒットエンドランも考えられる。

 嫌な場面だな。

 そう思った。


 そして初球。

 木崎選手はバントの構えをしている。

 

 一塁の中道選手は鈴鳴投手が投げると同時にスタートを切った。

 そして木崎選手はバントの構えからヒッティングに切り替えた。

 強い打球がライナーで一、二塁間に飛んでいる。


 これは完全にヒットコースだ。

 そう思った瞬間、忍者のように湯川選手の姿がさっと視界に入ってきた。

 そして横っ飛びして、何とノーバウンドで打球を捕球した。


 湯川選手はさっと起き上がると、一塁に送球した。

 スタートを切っていた中道選手は戻れず、ダブルプレー。

 僕は頭の上で手を叩いて、湯川選手を称えた。


 ノーアウトランナー一塁が、一気にツーアウトランナー無しになった。

 そして鈴鳴投手は、3番の弓田選手から三振を奪い、颯爽とベンチに戻っていった。

 

「ナイスプレー」

 僕はベンチに戻るなり、湯川選手に声をかけた。

 すると湯川選手が帽子を取って、頭を下げた。

「ご馳走さまです」

 

「???」

 僕は湯川選手の言う意味が理解できず、首をかしげた。

「今日、高橋さんの失敗を消す活躍をすると、高級寿司食べ放題に連れて行ってくれるんですよね?

 鈴鳴がみんなに言いふらしていましたよ」

 あの野郎…。


 財布の中に幾ら入っていたかな。

 カードが使える店だと良いけど。

 僕はそんな事を考えていた。


 

 

 

 

 


 

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