第567話 スランプだけれども…

 今日からはアウェーでの首位、岡山ハイパーズ戦。

 首位とは3.5ゲーム差となっており、もし3連敗するような事があれば、優勝争いからは後退、いや脱落と言っても良いかもしれない。


 そんな大事な初戦。

 札幌ホワイトベアーズは先発投手として、五香投手を立てた。

 五香投手はここまで1勝3敗、防御率は6.37で今季は貴重な敗戦処理

として活躍している。

 えーと、これは試合を捨てたのかな…。

 一瞬、そんな事が頭をかすめた。


 奇襲というか、奇手というか…。

 もしかしてショートスターターというやつか。

 そうか、それならわかる。

 なるほどなるほど。

今日のスタメンは、次のとおり。


 1 高橋(ショート)

 2 岡谷(ライト)

 3 下山(センター)

 4 ダンカン(ファースト)

 5 谷口(レフト)

 6 ブランドン(サード)

 7 光村(セカンド)

 8 上杉(キャッチャー)

 9 五香(ピッチャー)


 湯川選手と道岡選手の復帰はもうすぐと言われている。

 優勝争いにはやはり二人の力が必要だ。

 

 ところでセカンドに光村選手が入っているということは、また同学年祭りだ。

 作者も今、指摘されて気づいたようだ。

 抜けているというか、記憶力が無いというか、行き当たりばったりというか…。


 最近は13打席ノーヒット(1フォアボール)と絶賛スランプ中の僕だが、あまり悲観していない。

 だって仮に7打席ノーヒットでも、3本連続でヒットを打てば、打率3割だ。

 結果が出ていないとは言え、当たりは悪くないし、バットも振れている。


 たまたま打球が野手の正面をつくことが多いだけで、結果に一喜一憂せずにやることをやっていれば、ツキも変わってくるさ。ヘヘヘイ。


 そんな風に前向きに考えられるようになったのも、僕の成長したところだろう。


 対する岡山ハイパーズの先発は、エースの井本投手。

 力強いストレートとツーシーム、そしてカーブとチェンジアップを投げ分けてくる強敵だ。


 特に低めに決まるチェンジアップはわかっていても打てないと言われている。


 初回の第一打席。

 本日のスポンサー企業の役員の方の始球式が終わり、試合が開始された。


 不調の時は良く球を見るに限る。

 ただでさえ、威力のあるストレートとツーシーム。

 迂闊に打ちに行くと、内野フライとなるのがオチだ。


 そして僕はツーストライクを取られた後も粘りに粘り、フルカウントまで持ち込んだ。

 うん、今日は良くボールが見えている…気がする。


 そして外角へのチェンジアップをうまく拾った。

 お願い、落ちて。

 僕は心の中で祈りながら、一塁に向かった。

 打球はグラブを出した一塁手のわずか上を越え、ライト線上で弾んでいる。


 イェイ。

 14打席振りのヒットだ。

 僕は嬉しさを押し殺すように、鉄面皮を意識して、一塁ベース上に立った。


 さあ2番は一発があるが、打率が低い岡谷選手だ。

 あまり器用な選手ではないので、送りバントかな。

 そう思いながら、ベンチのサインを見ると、「走りたければ走れば。ただし自己責任で」というツンデレサインだ。


 ここ最近のスランプで塁に出られなかった事もあり、僕は盗塁王争いから、やや遅れを取っていた。

 1位は高輪選手と中道選手が36個で並んでおり、僕は後半戦はまだ盗塁を決めることができておらず、33個のままだ。


 とは言っても、僕はタイトルのために野球をやっているわけではない。

 チームの勝利に貢献するのが第一であり、タイトルは言わばそのオマケだ。

 盗塁は成功したら、チームに勢いをつけるが、失敗したら逆に勢いを削いでしまう。


 無鉄砲に走っていると見えるかもしれないが、僕は僕なりに状況や、試合の流れ等、色々考えながら野球をやっているのです。

 わかりますか?

 ファンの皆様。 


 

 

 

 

 

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