第180話 最下位相手に絶賛苦戦中
今日の試合、僕は1番ショートでのスタメンとなった。
セカンドは久しぶりのスタメンとなった、トーマス。
珍しく2番打者としての出場だ。
元静岡オーシャンズコンビで、チャンスメークせよ、という無言のミッションだろう。
今日のスタメンは以下の通り。
1 高橋隆(ショート)
2 トーマス(セカンド)
3 岸(センター)
4 岡村(ファースト)
5 デュラン(指名打者)
6 水谷(サード)
7 富岡(ライト)
8 高台(キャッチャー)
9 山形(レフト)
投 杉田
今日の先発は同学年の杉田投手、そして同じく富岡選手もスタメンとなっており、今日も同学年3人で活躍できると最高なのだが。
静岡オーシャンズの先発はウェイド投手。
今シーズン入団1年目であり、ここまで5勝7敗と負け越してはいるが、不振の静岡オーシャンズの投手陣の中では奮闘している方である。
シーズン当初は中継ぎだったが、今は先発ローテーションに入っている。
初回表、僕はフルカウントから外角低めへのストレートを見逃し、三振。
トーマスはライト前にポテンと落としたが、ライトは強肩の小田島選手。
素早く一塁に送球され、アウト。
記録はまさかのライトゴロ。
最悪のスタートだ。
その裏、泉州ブラックスの杉田投手は黒沢選手にソロホームランを浴び、1点を先制された。
そして泉州ブラックスは2回、3回とウェイド投手に簡単に抑えられ、1対0のまま4回表の攻撃を迎えた。
バッターは1番の僕からの好打順であったが、三者凡退に終わってしまった。
(僕は2打席連続の三振)
ウェイド投手は緩急をうまく使っており、打てそうで打てない。
そして杉田投手は4回にも2点を失い、4回を終えた時点で、泉州ブラックスは3対0と劣勢に立たされていた。
5回表は水谷選手にソロホームランがでて、1点を返したものの、その裏また1点を取られて、4対1。
杉田投手は更にランナーを出し、ワンアウト一二塁の場面として降板した。
後を継いだのは、困った時のニノこと、二宮投手。
いつもどおり、ツーアウト満塁としたが、何とか追加点を与えずに抑えた。
途中経過を見ると、東京チャリオッツは現在新潟コンドルズ相手にリードしており、泉州ブラックスとしては負けたくないところだ。
6回表の攻撃も無得点に終わり、その裏も二宮投手が続投した。
(僕はショートゴロで今日は3タコ……)
この回もツーアウト一二塁のピンチを背負い、二宮劇場は開幕したが、無失点で切り抜けた。
7回表は2番のトーマスからの打順である。
つまりここまで水谷選手のホームランを除けば、一人のランナーも出していないことになる。
静岡オーシャンズのマウンドは引き続きウェイド投手。
トーマスは8球粘ったが、9球目を打ち上げてショートフライに終わり、後続もあっさりと凡退した。
7回裏は秦野投手が登板し、無失点に抑えた。
そして8回表の攻撃も、ウェイド投手に変わってこの回からマウンドに上がったセットアッパーの柏投手の前に三者凡退に終わった。
8回裏も秦野投手が続投し、三者凡退に抑え、4対1のビハインドのまま、9回表、最後の攻撃を迎えた。
東京チャリオッツは既に勝利しており、このまま負けると、泉州ブラックスは首位争いから後退する。
9回表、静岡オーシャンズのマウンドには、抑えの浜田投手が上がった。
抑えとはいえ、浜田投手はそれほど安定しておらず、既に5敗しており、防御率も3点台だ。
勝ちパターンを確立できなかったのも静岡オーシャンズの低迷の一因であり、泉州ブラックスにとってはまだ諦めるには早いのだ。
この回先頭バッターは高台捕手だったが、伊勢原選手が代打で出場し、ライト前にヒットを放った。
水谷選手のホームラン以来のヒットであり、この試合初めてのノーアウトのランナーだ。
次は9番の山形選手。
11球粘り、フォアボールを選び繋いだ。
これでノーアウト一二塁。
もし一発でれば同点だ。
次は先頭バッターの僕。
僕がネクストバッターズサークルから打席に向かう前に、ベンチから出たトーマスに呼ばれた。
「タカハシ、ゼッタイルイニデデネ。アトハマカセテヨ」
僕は深く頷いた。
というのもトーマスは陽気なプエルトリコ人であり、いつも朗らかな笑顔を見せるが、この時のトーマスはなぜかこれまで見たことがないような思い詰めたような顔をしていたのだ。
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