第367話 大事な二位攻防戦

 京阪ジャガーズとの三連戦の初戦に快勝した、札幌ホワイトベアーズはその勢いのまま、翌日、翌々日も勝利し、見事に三連勝を飾った。


 これで首位、京阪ジャガーズとは6.5ゲーム差となり、まだ差はあるが、少しだけ後ろ姿が見えてきた、ような気がする。

 3位とも1.5ゲーム差をつけており、僕にとって初のクライマックスシリーズ出場に視界良好である。


 その後は大型連勝はないものの、連敗もなく、季節は早くもシーズン終盤の9月半ばを迎えた。


 残り試合数は、15試合となり、首位、京阪ジャガーズとは6.0ゲーム差と中々差が縮まっていない。


 もっとも3位の熊本ファイアーズとは1.0ゲーム差、4位の仙台ブルーリーブスとは4.5ゲーム差となっており、クライマックスシリーズには出られそうだ。


 僕個人としては、めでたい事に、すでに規定打席の443打席に到達している。

 ここまでチーム128試合中、115試合に出場し、461打数124安打の打率.269、ホームラン3本、打点31、盗塁24(失敗9)となっている。

 打率はベストテンの12位。

 10位とは5厘差だ。


 試合数があまり伸びていないのは、8月下旬に足に自打球を当て、9試合ほど欠場していたからだ。

 当たった時はそうでもなかったが、段々と腫れてきて、思ったよりも治るのに時間がかかってしまった。


 ちなみに谷口は100試合に出場し、309打数77安打の打率.249、ホームラン11本、打点37、犠打25。

 僕がいない隙に、ちゃっかりと数字を伸ばしやがった。


 ホームランもプロ8年目で初めて二桁に載せた。

 入団時は平井とともに、未来の長距離砲と期待されたことを思うと、遅いくらいかもしれないが、じっくりと力をつけてきた成果である。

(ちなみに平井はプロ3年目の10本が最高である)


 ちなみに五香投手はここまで投げては3勝4敗、防御率4.56。

 二軍落ちしていたが、今日一軍へ再昇格してきた。

 いきなり先発である。


 今日は3位の熊本ファイアーズとのホーム三連戦の最終日。

 1勝1敗となっており、負ければ3位に落ちてしまう。

 

 2位ならクライマックスシリーズのファーストステージをホームで行えるので、何とか2位を死守したい。

 その大事な試合で先発を任された五香投手には頑張って欲しい。


 今日のスタメンは次の通り。

 

 1 高橋(ショート)

 2 谷口(レフト)

 3 道岡(サード)

 4 ダンカン(ファースト)

 5 下山(センター)

 6 西野(ライト)

 7 光村(セカンド)

 8 武田(キャッチャー)

 9 五香(ピッチャー)


 362話をコピーして、ピッチャーだけを入れ替えたように見えるが、気のせいだろうか。

 スタメンのうち、僕、谷口、光村選手、五香投手の4人が同学年である。

 同学年カルテットで、チームを勝利に導きたいものだ。


 五香投手はとにかく立ち上がりが課題である。

 以前、岡山ハイパーズ戦で先発した時も、先頭打者ホームランを打たれた。


 今日の五香投手は立ち上がりを意識しているのを感じる。

 先頭の国分選手に対し、丁寧に投げている。

 そして丁寧に投げすぎて、フルカウントからフォアボールを与えてしまった。

 ダメじゃん。


 2番は麻生選手。

 バントが上手い選手だ。

 当然ここは送りバントをしてくるだろう。


 そう思っていたら、ワンボールからの2球目をヒットエンドランし、打球は一、二塁間を抜けた。

 これでいきなりノーアウト一、三塁のピンチだ。


 僕ら内野陣は早くもマウンドに集まった。

 武田捕手が言った。

「ピンチだな」

「そうですね」

「1点は覚悟しなきゃな」

「いえ、1点もやりません」

 五香投手は毅然と言った。


 武田捕手はニャリと笑った。

「よし、その意気だ。

 バックも頼むぞ」

「はい」

「りょーかい」

「OK」


 僕らはそれぞれの守備位置に戻った。

 そうだ。

 1点は仕方ないと思っていると、そうはならないのが世の常だ。

 ここは1点もやらないと考えていないと、良い結果にはならないのだ。

 

 


 

 


 

 

 

 

 


 

 

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