第359話 珍しい名字のイケメン投手

 後半戦の最初の試合、高野選手の逆転サヨナラホームランで敗れたショックを引きずったのか、札幌ホワイトベアーズは川崎ライツに三連敗を喫してしまった。


 これでまた首位の京阪ジャガーズとゲーム差を離され、順位も4位に落ちてしまった。

 3位とは1.5ゲーム差なので、まだまだ逆転は可能であるが、これ以上負けが混むと、3位どころか4位も危なくなるかもしれない。


 移動日を挟んで、熊本ファイアーズとのホーム三連戦であったが、初戦、2戦目と落とし、後半戦に入ってから、チームは5連敗となった。


 このピンチを救うのは、やはりエースしかいない。

 ということで、今日の先発は青村投手。

 オールスターを挟んだので、少し登板間隔を開けたようだ。

 今日負けたら、どこまでも連敗が続きそうな気がする。

 

 今日のスタメンは以下の通り。

 連敗中ということもあり、オーダーを大幅に入れ替えた。


 1 高橋(ショート)

 2 光村(セカンド)

 3 道岡(サード)

 4 ダンカン(ファースト)

 5 下山(センター)

 6 立花(レフト)

 7 西野(ライト)

 8 上杉(キャッチャー)

 9 青村(ピッチャー)


 最近当りが止まっている谷口、ロイトン選手がスタメンを外れ、光村選手、立花選手が替わりにスタメンに入った。


 光村選手は前にも述べたように、新人であるが、僕と谷口とは同学年である。

 ここは数少ないチャンスを活かしたいところだろう。


 熊本ファイアーズの先発は、鍋釜投手。

 一度聞いたら、忘れられない苗字だ。

 僕の苗字が日本に多くいる名字なので、変わった名字にちょっと憧れがある。


 今年30歳を迎えるベテラン左腕で、球界屈指のイケメンと言われている。

 だが今季一軍初登板であり、年齢的にも活躍しないと、来年の契約が危ないかもしれない。


 1回表、青村投手は熊本ファイアーズを三者凡退に抑えた。

 さすがエース。


 1回裏、僕は打席に立った。

 球界屈指のイケメン対決だ。

(異論は認めない)


 打ち返して、そのイケメンが悔しさに歪むところを見てみたい。

 僕は打席に入り、サードの伊集院選手の守備位置を確認した。


 やはりセーフティーバントを警戒している。

 そりゃそうか。


 初球。

 外角低めへのストレート。

 140km/hくらいであり、特別速くない。

 素直な軌道なので、ジャストミートすれば飛びそうな球だ。

 コースはストライクゾーンぎりぎりに決まって、ストライクワン。


 2球目。

 外角のボールゾーンから、ストライクゾーンに入ってくるスライダー。

 遠く見えたので、見送った。

 だが判定はストライク。


 僕は動揺を悟られないように、ポーカーフェイスを装った。

 正直、ノーボール、ツーストライクは予定外だ。


 3球目。

 外角低めへのカットボール。

 これは外れてボール…。

 と思いきや、一拍遅れて球審がストライクをコールした。

 えー、今のが?

 と思ったが、まだ第1打席。

 素直にベンチに引き下がった。


「中々スライダーのキレも良さそうだな」

 ベンチに戻ると、隣にいた谷口が話しかけてきた。

「そうだな。

 遠く見えたけど、今日の球審は外角を取るのかもしれないな」

「うーん、ベンチから見るとストライクゾーンに見えたけどな。

 曲がり幅が鋭いから、次の打席はそれを頭に入れたほうがいいぞ」


 谷口は試合に出ていなくても、しっかりと見ている。

 こういう姿勢は、僕としても見習うべきところだ。


 2番の光村選手は初球のカットボールに手を出して、セカンドゴロに倒れ、3番の道岡選手もフルカウントから見逃しの三振に倒れた。

 これは苦戦するかも…。

 

 

 



 

 

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