第159話 首位攻防、第一ラウンド

 静岡オーシャンズとは対照的に、僕の所属する泉州ブラックスは好調を維持しており、50試合を終えて、26勝21敗3引き分けで、勝率.553の2位に付けていた。


 ここまでの僕はチームの試合数のちょうど半分の25試合に出場して、29打数7安打の打率.241、ホームラン2本、打点5、盗塁5(盗塁死2)、エラー2。


 昨シーズンに引き続き、開幕から一軍には残っており、それなりに戦力になっているとは思うが、ホームランを2本打った以外は昨年と代わり映えのない成績である。

 

 2軍では泉選手がシーズン通算で打率三割を超えるなど、好調を維持しており、また若手の石川選手も出場機会を増やしている。

 僕は安穏としている立場ではない。


 さて6月の最初の対戦カードは、首位の東京チャリオッツとのホームでの首位攻防3連戦。

 東京チャリオッツは昨オフに大型補強を行った成果がでているのか、ここまで51試合を消化して、28勝20敗3引分の勝率.583と好調である。


 昨年オフに中本選手がフリーエージェントで大リーグへ移籍してしまったが、フリーエージェントとなっていたシーリーグの札幌ホワイトベアーズの主力だった砂川選手を6年40億円という途方もない金額で獲得した。

 ちなみに中本選手は黒沢選手とのフロリダ自主トレに参加した選手の1人である。


 更に岡山ハイパーズの俊足の浮田外野手をフリーエージェントで獲得した他、現役大リーガーの外国人投手も2人獲得した。

 

 東京チャリオッツの選手年俸の合計は、泉州ブラックスや静岡オーシャンズの約2倍である。

 今季はそんな金持ち球団に立ち向かう、泉州ブラックスという構図になっていた。

 もしこの3連戦、泉州ブラックスが3連勝するようなことがあれば、首位交代となる。

(2勝1引分けでも首位に立つ)


 この大事な3連戦の初戦、大事なマウンドを託されたのは、エースの児島投手だった。

 児島投手は期待に応え、7回1失点の好投で、見事勝ち星をあげた。


 そして2戦目の先発マウンドに立ったのは、ジョーンズ投手。

 5回3失点と最低限の仕事をし、打線もこれに応え、泉州ブラックスは6対4で連勝した。

 

 この時点で、泉州ブラックスは28勝21敗の勝率.571、東京チャリオッツは28勝22敗の勝率.560となり、首位に立った。


 僕は、ベンチ入りはしていたが両試合とも出場機会が無かった……。

 そして大事な3戦目。

 先発のマウンドには三ツ沢投手が上がった。

 三ツ沢投手はかってのドラフト1位であり、今シーズンで大卒3年目となる。

 過去2シーズンで計5勝と、なかなか期待に応えられなかったが、今季は開幕からローテーションに入り、ここまで3勝(3敗)をあげている。

 この試合も僕はベンチスタートであり、来たるべき出番に備えていた。 


 5回から雨が降り出した。

 泉州ブラックススタジアムはドーム球場ではないため、雨が降ると、グラウンドがぬかるむ。

 雨は強くなったり、弱くなったりしながらも、試合続行には支障は無かった。


 そして3対3の7回裏、ワンアウトからヒットを打ったトーマス・ローリー選手の代走として、僕にお呼びがかかった。

 この回、4番の岡村選手の内野ゴロの間に二塁に進み、5番の宮前選手のタイムリーツーベースで僕は勝ち越しのホームを踏んだ。

 これで4対3。

 この首位攻防戦、3連勝が見えてきた。

 この大事な試合で僕はセカンドの守備についた。


 8回表のマウンドはおなじみの勝利の方程式の1人、セットアッパー山北投手。

 泉州ブラックスとしては逃げ切り体制に入った。

 そして山北投手はこの回を3人で抑え、僕は守備機会が無かった。


 8回裏、泉州ブラックスの攻撃は7番の下位打線からであり、元大リーガーのミランダ投手に三者凡退に抑えられた。


 そして9回表、泉州ブラックスの頼れる抑えのエース、平塚投手がマウンドに上がった。

 雨の中でも残ってくれている、大勢の泉州ブラックスファンの声援を背に受けて、僕はセカンドの守備位置に向かった。

 3連勝まで、あと1イニングである。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 


 

 

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