第365話 意外な結末

 記念すべき365話である。

 つまり毎日1話としても、丸1年分である。

 素晴らしい。

 自分で自分を褒めてあげたい。

 そもそもこの小説を書こうと思ったきっかけは…。


 …。

 背後に殺気を感じたので、続きを書きます…。


 ワンアウト一、三塁のチャンスとは言え、ノーボール、ツーストライクと追い込まれた。

 ここはフォークを頭に入れつつ、速球にも対応しなければならない。

 外角に逃げていくスライダーもある。

 全ての球に対応しようとすると、三振するのが関の山だろう。

 さてどうするか。


 僕は一度、バッターボックスを外した。

 ストレート、フォーク、スライダー。

 裏を書いてシンカーも無くはない。

 さてどうしょう。


 3球目。

 内角へのシンカーだ。

 正直、ここでシンカーを投げてくる可能性は1割も無いと思っていた。

 

 だが僕はその球にヤマを張っていたのだ。

 ここは見逃しの三振狙いで、これまで投げていなかった球種が来る、と。

(それ以外の球が来たら、ファールで逃げようと思っていた)


 思いっきり引っ張った打球は、サードの頭を越え、レフト線上に飛んでいる。

 そしてライン上で弾み、ファールゾーンに転がっている。

 三塁ランナーは悠々と生還し、一塁ランナーのロイトン選手は三塁ストップ。

 僕は二塁に到達し、軽くガッツポーズした。


 これで4対4の同点に追いついた。

 初回にいきなり満塁ホームランを打たれた時はどうなることかと思ったが…。


 ワンアウト二塁、三塁で迎えるバッターは谷口。

 超美味しい場面だ。

 バットにさえ当てれば、点が入る可能性がある。


 京阪ジャガーズは造田投手を諦め、金山投手をマウンドに送った。

 金山投手はここまで防御率0点台であり、力のあるストレートとスプリットが武器の投手だ。


 そして谷口はストレートを2球連続で空振りし、簡単に追い込まれてしまった。

 こうなると昔の谷口なら、三振は必至である。

 しかし今の谷口はそう簡単には三振しない。


 鋭いスプリットにもついていき、フルカウントまで持ち込んだ。

 そしてファールを挟んでの8球目。

 真ん中低めのスプリットを見事にセンター前に打ち返した。


 三塁ランナーのロイトン選手はもちろんの事、二塁ランナーの僕もホームインした。

 これで6対4、見事に逆転した。


 こうなると今季の札幌ホワイトベアーズ打線は止まらない。

 道岡選手もタイムリーツーベースを放ち、金山投手をマウンドから引きずり下ろした。


 そして変わった南崎投手から、ダンカン選手もタイムリーヒット。

 そしてトドメは下山選手のツーランホームランだ。


 これで10対4。

 一気に試合を決めた。

 京阪ジャガーズの強力中継ぎ陣を打ち崩したというのは、これから首位との差を詰めていく上でもとても大きい。


 札幌ホワイトベアーズは、結局この試合に11対5で勝利した。


 ヒーローインタビューは、もちろん勝ち越しタイムリーを放った谷口だろう。

 広報の新川さんが谷口と何かを話している。


 良かったな、谷口。

 僕はそれを横目にグラブとバットを持って、ベンチ裏に下がろうとした。

 するとおもむろに襟首を掴まれた。

 何だ何だ。


 振り向くと、マネージャーの石山さんだった。

「お前、どこに行くんだ」

「え?、ベンチ裏ですけど。何か?」

「何か?、じゃないだろう。

 まだやることが残っているだろう」

 え?、何だろう。

 グラウンド整備ではないだろうし…。

 用具の後片付けか?

 でももう僕は若手ではないと思うが…。

 

「バカヤロウ。ヒーローインタビューだ。

 お前は同点タイムリーを打っただろう。

 我々としても不本意だが、お前をヒーローに選ばざるを得ない」


 そうか。

 確かに今日の僕は5打数2安打で、打点2だ。

 しかも記録上はホームスチールもキメているし…。

 試合で疲れているが、お呼びとあっちゃ、仕方がない。

 

「いいか、今日は余計な事を言うなよ」

 下山選手に声をかけられた。

 いつ僕が余計な事を言ったのだろう?

 失礼しちゃうな。プンプン。

 

 


 

  

 

 

 

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