第254話 可愛い後輩のために?
中京パールスとの三連戦は初戦は勝利したものの、その後二連敗し、ゲーム差は10.5ゲーム差に開いてしまった。
もはや優勝は絶望的であり、2位の四国アイランズとも6.5ゲーム差あるので、むしろ0.5ゲーム差に迫られている4位の静岡オーシャンズ、そしていつの間にか2.0ゲーム差まで迫ってきた、5位の東京チャリオッツを気にしなければならない状況になってきた。
僕はというと、初戦は犠牲フライとタイムリースリーベースヒットで2打点を挙げ、ヒーローインタビューにも呼ばれたが、2試合目はベンチスタートで出場なし、3試合目は代走で出場し、守備についたが、打席は回ってこなかった。
というのも最近はベテランの額賀選手が打撃も好調であり、またセカンドの伊勢原選手も安定した成績を残している。
相手先発が左の場合は、まだスタメンの可能性もあるが、右投手の場合はベンチスタートが多くなっている。
左右どちらも安定して打てないと、レギュラー獲得は覚束ない。
後半戦最初のカードの中京パールスとの三連戦から一日置いて、次は引き続きホームでの四国アイランズとの平日ナイター三連戦。
「うーん、やはりお客さん少ないな」
「まあ、平日ナイターでチームもあまり調子よくないですからね」
試合前の練習が終わり、ビジターチームの四国アイランズの練習を見ながら、岸選手と話していた。
試合開始二時間前から球場にはお客さんが入ってくるが、オールスター前と比べても少ないと感じる。
夏休み期間中なのに…。
今日の四国アイランズの先発は左腕のブラウン投手という事で、3試合ぶりにスタメン出場となった。
昨年対戦時はタイムリーヒットを打った後の打席でデットボールを受けた。
軽く乱闘になりかけたが、試合後に謝罪を受け、わだかまりは全くない。
今日のオーダーは次のとおり。
1 宮前(ライト)
2 伊勢原(セカンド)
3 岸(センター)
4 岡村(ファースト)
5 デュラン(指名打者)
6 水谷(サード)
7 金沢(レフト)
8 高台(キャッチャー)
9 高橋隆介(ショート)
高橋隆久(ピッチャー)
先発の高橋隆久投手は、ドラフト1位で入団した新人左腕であり、春先に静岡オーシャンズ戦でプロ初勝利を挙げた。
ところがその後は好投してもなかなか勝運に恵まれず、1勝4敗で二軍に落ち、今日昇格してきた。
以前はスコアボードには、僕は高橋隆、彼は高橋久と掲示されていたが、かえってわかりにくいということで、フルネームで掲示されている。
プロの先輩として、同性の後輩の2勝目をアシストしたいものだ。
初回表、1番は細川選手。
昨秋のドラフトでドラフト1位で3球団競合の上、四国アイランズに入団した期待の新人だ。
ここまでほぼフル出場して、打率も.273と期待に違わぬ活躍を見せている。
初回、ドラフト1位の新人対決だったが、鋭いショートライナーがショートに飛んできたものの、僕の守備範囲だった。
手前でショートバウンドする難しい打球だったが、僕も伊達にプロで7年もやっていない。
軽快に捌いた。
マウンドの高橋隆久投手は、僕の方を向いて、帽子を取って軽く頭を下げた。
お安い御用だよ。
僕は軽く右手を上げた。
高橋隆久投手は185cmを越える長身から投げ下ろす直球が最大の武器であるが、ツーシーム、カットボール、フォークも操る。
まだフォークボールの精度に課題があり、ストレートを狙い打ちされることも多く、なかなか勝ちには繋がっていないが、持っているポテンシャルは凄いものがある。
この回はツーアウトから3番のリンデン選手にフォアボールを一つ与えたものの、無失点で切り抜けた。
1回裏の泉州ブラックスの攻撃はわずか5球で三者凡退に終り、2回表のマウンドに高橋隆久投手は上がった。
この回も6番の香美選手にフォアボールを与えたものの、7番の巧打者、高島選手をショートゴロに打ち取り、ダブルプレーで切り抜けた。
2回裏の泉州ブラックスの攻撃も無得点に終わり、試合開始から30分も経過していないのに、早くも3回表を迎えた。
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