第255話 泉州ブラックスの高橋といえば?

 3回表の四国アイランズは9番打者からの攻撃であり、ランナーを1人でも出すと、クリーンアップに回る打順たったが、高橋隆久投手は三者凡退に抑えた。


 3回裏はツーアウトから僕の打順を迎えた。

 後輩のためにも何とか塁に出たいところだったが、ファール2つで簡単に追い込まれてしまい、3球目の外角低めへのストレートを見逃し、三球三振に倒れてしまった…。


 その後も投手戦は続き、両チーム無得点のまま、6回裏を迎えた。

 泉州ブラックスはここまでブラウン投手の前にパーフェクトに抑えられている。

 そしてこの回もツーアウトランナー無しの場面で僕の打順を迎えた。


 ブラウン投手は球が速い分、元々コントロールはあまり良くない。

 僕はこの打席はじっくり見ていくことにした。

 するとストライクゾーンぎりぎりではあったが、3球連続ボールとなり、カウントはスリーボール、ノーストライクとなった。

 ブラウン投手は審判の判定に対し、苛ついた表情を浮かべている。


 そして4球目はワンバウンドし、完全なボール。 

 一球も振らずにフォアボールとなった。

 そしてこれでパーフェクトは阻止した。


 次は1番の宮前選手の打席である。

 ベンチのサインはグリーンライトだったが、僕は初球からスタートを切った。

 清田捕手は強肩であるが、ブラウン投手はランナーを1人出して力んだか、投球がハーフバウンドとなった。

 清田捕手はキャッチャーミットからボールをこぼし、投げてこなかった。

 もちろん僕は悠々セーフ。

 ツーアウトではあるが、この試合初めて、スコアリングポジションにランナーを進めた。


 そして宮前選手は2球目の高めのツーシームをライトに打ち上げた。

 ツーアウトなので僕は打った瞬間、スタートを切っている。


 宮前選手の打球は完全に打ち取られた当たりだったが、風に流されたのか、ライン際のライトの前にポトンと落ちた。


 僕はその時にはすでに三塁を回っており、悠々ホームインした。

 宮前選手のタイムリーポテンヒットだ。

 宮前選手は一塁上で、苦笑いを浮かべている。


 そして高橋隆久投手は降板し、7回からは泉州ブラックスの誇る盤石のリリーフ陣、つまり倉田投手、山北投手、平塚投手がヒットやフォアボールでランナーを出しながらも、無失点に抑えた。


 結局、泉州ブラックスは僕のフォアボールと宮前選手のポテンヒットだけに抑えられたが、虎の子の1点を守りきり、1対0で勝利した。


 泉州ブラックスの1安打に対して、四国アイランズは7安打を放っていたが、無得点に終わった。

 勝利投手はもちろん高橋隆久投手。

 ヒーローインタビューは高橋隆久投手に加え、倉田投手、山北投手、平塚投手の4人が上がった。


 救援投手がヒーローインタビューに上がることは珍しい。

 いつもは投のヒーローと打のヒーローがインタビューを受けるが、宮前選手は辞退したようだ。

 確かにあの当たりでヒーローインタビューを受けるのも照れるかもしれない。


 高橋隆久投手はヒーローインタビューを受けるのが2回目とあって、前回よりは落ち着いていた。

 そしてまたしても、「高橋隆と言えば、僕の事になるように頑張ります」と言っていた。

 前も言ったけど、隆の字は渡さないよ。

 どうしても欲しければ僕の屍を越えていけ。

 ロッカールームのモニターでヒーローインタビューを見ながら、そう思った。


 明日も試合がある。

 僕は高台捕手と岸選手の悪魔の誘いを振り切り、今日のところは真っすぐ帰宅した。

 ただでさえ、夏真っ盛り。

 体力の消耗が激しい。

 良く食べて良く寝ないとね。


 さあ明後日からは8月。

 シーズンも後半に入ったし、頑張ろう。

 


 

 

 

 

 

 


 


 

 

 

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