第586話 メタメタの盗塁王争い
仙台ブルーリーブスとの初戦。
僕は4打数1安打で、盗塁を決めることはできなかった。
対して、京阪ジャガーズの中道選手は盗塁を2つ決め、差は3つとなった。
(中道選手が52個、僕が49個)
ていうか前話でのスタメン紹介は何の意味があったのか?
当たり前のことだが、警戒されている中で盗塁を決めるのは至難の業である。
僕が塁に出ると、相手バッテリーはかなり警戒している。
お互いに既に今シーズンの順位が決まっているので、ここは僕に花を持たせてくれる…なんて事は一切無い。
プロ野球選手である以上は常に全力を尽くす。
全てが真剣勝負。
それが当たり前である。
残り試合は7試合。
首位打者は無理としても、打率3割でシーズンを終えたい。
過去に打率3割以上で、シーズンを終えたのは2回あるがいずれも規定打席不足だった。
(そのうち一度はプロ3年目の10打数3安打)
従って規定打席に到達しての打率3割達成は僕にとっては夢なのだ。
仙台ブルーリーブスとの2戦目は、2打数ノーヒットだったが、デッドボールとフォアボールで出塁した。
デッドボールは膝付近を掠めたもので、全く痛くは無かった。
相手投手は帽子を取って詫びていたが、しっかりと牽制球を立て続けに3球投げてきた。
悪いと思うなら、ここは黙って盗塁させてくれ、と思ったがそうはならない。
ということでかなりの警戒をされた中、盗塁を試みたがしっかりアウトになった。
チッ、ケチ。
最終打席にフォアボールを選んだ際も盗塁を試みた。
この時は送球が逸れたこともあり、何とか盗塁を決めた。
だが中道選手も今日の試合で盗塁を2つ決めており、差が縮まらないどころか差は更に開いた。
残り6試合で差は4つ。
しかもそのうち2試合は京阪ジャガーズ戦だ。
厳しい闘いだ…。
そして移動日を挟んでの熊本ファイアーズ戦。
僕は何と打席に5回立ち、3打数2安打、フォアボール2つ。
しかも凡退した打席も相手のエラーで出塁した。
つまり5打席全て出塁したのだ。
こうなるとこっちのもんである。
一気に盗塁を3つ決め、この日試合が無かった中道選手との差を一つに縮めた。
(中道選手が54個、僕が53個)
自分で言うのも何だが、盗塁王を取れなくても、盗塁数50個超えというのは凄いのではないだろうか?
大リーグ挑戦の条件について、タイトル獲得ではなくて、打率3割、盗塁50個とかにしてくれていればなー。
そんな事を思った。
そして今シーズン、ついに最終戦を迎えた。
既にホーム最終戦は終えており、今シーズンの最終戦は雨で中止になった試合の代替試合。
アウェーでの京阪ジャガーズ戦だ。
こういうのをご都合主義というのだろう。
ちなみに小説におけるご都合主義とは、物語の進行に都合のよいように作られた強引もしくは安直な設定・展開のことらしい。
更に言うと、最終戦を前にして、盗塁王争いは僕と中道選手が56個で並んでいる。
まさにご都合主義の極みである。
それならここは2人とも最終戦に欠場して、仲良く盗塁王を分け合うという展開はどうだろうか?
さすがにそれはやりすぎ?
どの口が言っているのだ。
作者に物申したいことはたくさんあるが、ここは眼の前の試合に集中することとしたい。
メタ発言をすると、コメントに苦情が来るし…。
気を取り直して、シーズン最終戦のスタメンは次のとおりである。
1 高橋(ショート)
2 光村(セカンド)
3 谷口(センター)
4 ブランドン(ファースト)
5 立花(レフト)
6 北畠(サード)
7 九条(ライト)
8 武田(キャッチャー)
9 青村(ピッチャー)
今日のキャッチャーは強肩の武田捕手である。
打率は1割台であるが、盗塁阻止率は3割を大きく超えている。
ちなみにもう一人の主力捕手である、上杉捕手はどちらも2割台である。
そして先発は青村投手。
シーズン当初は調子が悪かったが、それでもここまで10勝(9敗)を挙げている。
海外フリーエージェントの資格を有しており、来シーズンは大リーグ挑戦がほぼ確定している。
青村、武田バッテリーは、きっと中道選手を完璧に抑えてくれるだろう。
そして僕はめでたく盗塁王獲得。
僕はスタメン発表を見ながら、そんな事を考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます