第214話 燃えよブラックス?

 ゴールデンウィークも終わると、今シーズンの傾向が見えてくる。


 現在のスカイリーグの順位は、1位中京パールス、2位四国アイランズ、3位に我が泉州ブラックス、4位静岡オーシャンズ、5位新潟コンドルズ、6位東京チャリオッツとなっている。

 

 今期の最大の番狂わせは、やはり東京チャリオッツが最下位に沈んでいることだろう。

 

 東京チャリオッツは、潤沢な資金力を持ち、フリーエージェントの選手や大物外国人を次々に獲得し、また彼らも期待に答え、毎年首位争いをしてきた。

 ところが今季は主力にケガが相次ぎ、また不調の選手も多く、なかなか波に乗れていない。

 

 もっとも1位から最下位までのゲーム差は6ゲームであり、まだまだ残り試合数は多いので、今後どうなるかはわからない。


 今日からはその東京チャリオッツとのアウェーでの三連戦である。

 初戦の先発はエースの児島投手。

 対する東京チャリオッツの先発は、昨秋のドラフト1位で入団した日野投手である。

 日野投手は甲子園で活躍後、プロ志望届けを出さずに東京六大学の西北大学で活躍し、3球団競合の上、東京チャリオッツに入団した左腕。

 まさに野球エリートである。


 プロでも開幕3戦目で先発し、8回までノーヒットノーランの投球を披露した。

 この試合は9回にサヨナラホームランを打たれ、負け投手になったが、その実力の一端を垣間見せた。


 ところがプロは甘くない。

 その後は好投するものの勝てない試合が続き、ここまで0勝4敗と苦しんでいた。

 防御率は3.96とそれほど悪くないが、勝運に見放されている。


 相手が左腕とあって、今日の試合、僕はスタメンとなった。

 今日のオーダーは次のとおり。


 1 高橋隆(ショート)

 2 泉(セカンド)

 3 岸(センター)

 4 岡村(ファースト)

 5 デュラン(指名打者)

 6 宮前(ライト)

 7 本郷(サード)

 8 高台(キャッチャー)

 9 山形(レフト)

 ピッチャー 児島


 今日のスタメンの特徴は2番に一軍に昇格したばかりの泉選手の起用だ。

 右打ちということで抜擢されたのだろう。

 足はあまり速くないが、パンチ力が売りの選手だ。

 

 1番の僕が出塁し、2番の泉選手がヒットエンドラン、3番の岸選手がタイムリー、4番の岡村選手がホームラン。

 いいぞがんばれ、ブラックス、燃えよブラックスとなれば良いな。

(ちょさくけん?、なんですかそれ?、猪八戒なら知っていますが…)


 1回表、日野投手の火の玉ストレートが火を吹き、三球三振を喫してしまった。

 そして2番の泉選手、3番の岸選手も三振に倒れて簡単に攻撃にが終了した。


 1回裏はエースの児島投手が貫禄を見せ、三者凡退に抑えた。


 2回表。

 4番の岡村選手、5番のデュラン選手も連続三振に倒れ、6番の宮前選手がセカンドゴロを打ったら、球場内から拍手が起こった。


 2回裏も児島投手が三者凡退に抑え、3回表の攻撃となった。

 7番の本郷選手、8番の高台選手も三振に倒れ、迎えるはチーム屈指の選球眼を誇る9番の山形選手。

 そこ山形選手でさえ、簡単にツーストライクを取られ、ピッチャーゴロを打つのが精一杯たった。

 ここまで打者9人に対し、7三振。

 凄い新人が現れたものだ。


 だが我らの児島投手も負けてはいない。

 3回裏、フォアボールを一つの出したものの、ダブルプレーに打ち取り、無失点に抑えた。


 4回表。

 そろそろ何とかしたいところだ。

 初球。

 僕はセーフティバントをした。

 ボールはうまくピッチャーとサードの間に転がった。

 だが日野投手がすぐにマウンドを降りて、素手でボールを拾い一塁に投げてきた。

 僕はそれを横目で見ながら、一塁ベースを駆け抜けた。

 判定はどうだ?


「アウト」

 うーん、フィールディングも良いのか。

 なかなか隙がない。

 と思いながら、ベンチに帰ったら、泉選手がいきなりホームランを打った。

 そして次の岸選手もツーベースを放ち、4番の岡村選手がタイムリーヒット、そして5番のデュラン選手がとどめのツーランホームランを打った。

 どうだ、見たか。

 これがプロだ。

 2周り目になると簡単に打ち取られないぜ、と僕は勝手にベンチで1人、溜飲を下げていた。

 

 これで4対0。

 マウンドに内野手が集まり、日野投手はさっきまでの元気は無くなっていた。

 そして輪がほどけた。

 ここは続投のようだ。


 6番は宮前選手。

 そしてツーストライクと追い込まれながら、ファールで粘り、6球目をレフトスタンドへ打ち込んだ。

 これで5対0。


 たまらず東京チャリオッツの立野監督が出てきた。

 ピッチャー交替だ。

 日野投手が虚ろな目をして、マウンドを降りていく。

 3回までで7奪三振。

 素晴らしいピッチングをしていたのに。

 きっと1番打者にセーフティバントをされて、調子を崩したのだろう。

 きっとそうだ。そうに決まった。

 そんな事を考えながら、7番の本郷選手が打席に向かうのを見ていた。

 

 

  


 


 

 

 


 


 


 

 

 


 

 


 

 

 

 

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