第505話 因縁の対決?

 結局この試合は、5対0で札幌ホワイトベアーズが勝利した。

 青村投手は7回を被安打3、無失点に抑え、今シーズン初勝利を挙げた。


 僕はフル出場して、4打数1安打、フォアボール1、盗塁1。

 ヒットは1本だけだったが、2回出塁し、凡退した打席でも進塁打を2本打ったので、内容は悪くなかった。


 そして川崎ライツとの開幕三連戦は2勝1敗で勝ち越し、僕は13打数4安打の打率.308と良いスタートを切れた。

 ちなみに谷口はここまで11打数ノーヒットと不振に苦しんでいる。

 まあ良い当たりが、野手の正面をつくという不運もあるので、あまり心配はしていない。


 野球をしていると、バイオリズムというものが成績に影響していると感じる時がある。

 バイオリズムが良い時は、ボテボテの当たりがヒットになったり、盗塁時に送球が逸れたりする。

 

 一方で悪い時は、良い当たりが相手野手のファインプレーで阻まれたり、守備ではゴロがイレギュラーバウンドしてエラーするとか、不運が続く(ような気がする)。


 プロのシーズンは長丁場だ。

 良い時もあれば悪い時もある。

 悪い時に悪いなりに割り切って、目の前のプレーに一喜一憂しないことも重要なのだ。


 僕はそう思うのだが、谷口はそう考えてはいないようだ。

 今日も試合終了後、居残り練習をしている。

 まあ全てが自己責任のプロ野球選手。

 それぞれのやり方でやれば良い。


 次はアウェーでの京阪ジャガーズ戦。

 昨シーズン、最終戦で優勝を逃したことが余程悔しかったのだろう。

 ただでさえ、巨大戦力を誇るのに積極的に補強し、シーズン前の下馬評では優勝候補筆頭に挙げられている。


 投手は車谷投手、加藤投手、宗投手の3本柱は健在だし、その他にも元大リーガーのピーター投手や大リーグ帰りの番場投手もいるし、ドラフトでは1位で大学球界ナンバーワンピッチャーの井村投手を獲得した。

 

 中継ぎもドイル投手、造田投手、、金山投手、抑えはギャレット投手と弾数は揃っている。

 

 野手陣も昨シーズンの主力はそのまま残っている上に、大リーグで3割30本を記録したことのある、スピン外野手を獲得した。

 やや平均年齢は高いものの、戦力の充実度はピカイチだ。


 さて僕は今日も1番ショートでのスタメンを告げられている。

 開幕前は二遊間は百花繚乱の陣容で、血で血を洗う抗争を繰り広げた(大袈裟です。作者より)が、開幕すると僕と湯川選手がスタメンに落ち着いている。


 今シーズンはもはやレギュラー獲得が目標ではない。

 フル出場するのは最低ラインとして、数字にも拘りたいと思っている。


 京阪ジャガーズの今日の先発は、因縁の番場投手。

 昨シーズン、優勝を決定する試合でタイムリースリーベースヒットを打った相手だ。

(しかもサイクルヒット達成)

 きっと相手も僕のことを強く意識しているだろう。


 試合開始となり、僕はバッターボックスに入った。

 いつものことだが、京阪ジャガーズファンの声援は凄い。

 球場の恐らく90%以上が、京阪ジャガーズファンであり、声量も大きいし、ヤジも多い。


 この球場でアウェーで戦うためには鈍感力が大事である。

 以前にも述べたが、僕は天邪鬼なので、相手チームのお客さんの悲鳴を聞くと、快感を感じる。


 だから僕へのヤジはむしろ声援にすら感じるのだ。

 ヘイ、カモン。

 僕はバットを構え、番場投手に向き直った。


 初球。

 内角へのストレート。

 僕は仰け反って避けた。

 早速来たな。

 僕は闘争心がより高まるのを感じた。

 判定はもちろんボール。

 

 2球目。

 外角へのスライダー。

 さっきの残像が残っており、遠く見える…。

 ギリギリに決まってストライク…、とはさせない。

 僕は思い切り踏み込んで、ライト線に打ち返した。

 はっきり言ってミエミエだ。

 

 打球はライト線上に弾んでおり、判定はフェア。

 僕は悠々と二塁に到達した。


 番場投手は無表情を装っているが、内心はショックが大きいだろう。

 僕は二塁ベース上から、ベンチのサインを確認した。

 

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