第476話 緊迫の攻防
この大ピンチの場面でも、新藤投手は動じる仕草を見せない。
相変わらず顔色一つ変えていない。
そして運命の5球目。
何とど真ん中へのストレート。
三木選手は手がでなかった。
ここでこの球を投げ込む度胸。
さすが抑えの切り札だ。
フルカウントからの6球目。
このフォアボールが怖い場面で、フォークを投げ込んだ。
三木選手のバットは空を切った。
ここでフォークを投げ込める度胸こそが、新藤投手が不動の抑えとして君臨している所以だろう。
これでツーアウト。
だがピンチは続く。
次は1番に帰り、中道選手の打順だ。
バッターボックスに入る時の中道選手からは、かなり気合が入っていることが見て取れた。
そしてその中道選手に対し、新藤投手はまさかのフォークボールの3連投。
中道選手は三振は少ないバッターであるが、3球全てに手を出し、空振りの三振。
見事にピンチを脱した。
新藤投手は軽くガッツポーズして、マウンドを降りた。
見た目には現さなかったが、やはりかなりのプレッシャーを感じていたのだろう。
これで試合は延長戦に突入する。
延長10回表、京阪ジャガーズのマウンドは金山投手。
まだ京阪ジャガーズのブルペンにはドイル投手、番場投手が残っている。
それに対し、札幌ホワイトベアーズは自慢のKLDSを使い切っている。
戦力的には京阪ジャガーズの方が有利だろう。
札幌ホワイトベアーズのこの回の攻撃は、5番の下山選手だったが、三振に倒れ、次は6番の湯川選手。
金山投手のストレートをピッチャーに打ち返し、センター前に運んだ。
ワンアウト一塁。
そして西野選手が送りバントで送り、ツーアウトながらランナー二塁とした。
ここでバッターは8番の武田捕手。
札幌ホワイトベアーズは代打として、今泉選手を送った。
京阪ジャガーズの内野陣はマウンドに集まっている。
ここは今泉選手と勝負か、それとも申告敬遠で9番バッターと勝負するか。
判断が難しい場面だ。
そして京阪ジャガーズは申告敬遠を選択した。
札幌ホワイトベアーズは代打として、ベテランの岡谷選手を送った。
しかし良くここまで岡谷選手を残しておいたものだ。
打率は高くないが、足が速く、長打力もある。
何より勝負強い。
そして僕はネクストバッターズサークルに向かった。
金山投手も岡谷選手に警戒したのか、カウントはスリーボール、ワンストライクとなった。
そして運命の5球目。
金山投手のストレートを捉えた打球が、ライトに上がった。
良い当たりだ。
ライトの向田選手が背走している。
頼む。
抜けてくれ。
そして向田選手は懸命にジャンプし、フェンスに激突した。
どうだ。
どうなったんだ?
一瞬の静寂、そして大きな歓声が上がった。
向田選手はしっかり打球を捕球していた。
岡谷選手は天を仰いでいる。
素晴らしいバッティングだったが、向田選手の守備がそれを上回った。
この回、大きなチャンスを逃したが、10回裏を抑えると、札幌ホワイトベアーズは一番打者、つまり今日4打数3安打で、サイクルヒットに王手をかけている、チームきっての人気選手でスピードスターからの打順である。
10回の裏は何としても0点に抑えたい。
札幌ホワイトベアーズはこの回のマウンドを大磯投手に託した。
大磯投手はKLDSには及ばないものの、今シーズンは中継ぎで40試合以上に登板している。
今年7年目、31歳の右腕だ。
この回の京阪ジャガーズの攻撃は、二番打者から。
そしてこのプレッシャーのかかる場面で、大磯投手は一世一代の好投を見せ、見事に京阪ジャガーズの上位打線を三者凡退に打ち取り、颯爽とベンチに戻ってきた。
そして試合は11回表。
僕からの打順だ。
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