第402話 第383話続き(浜頓別町でのトークショーの内容)
(作者より)
仕事や飲み会等により、本日の更新分が間に合いませんでした。
その穴埋めとして、浜頓別町のトークショーの内容について、記載します。
(近況ノートのサポーター特典としていたものの、焼き直しです)
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会場となった公民館は、席が埋まり、後列には立ち見の方もいた。
この地域の方々は、球場に来るのも一苦労だろう。
そんな中、これだけ多くの方に応援して頂いていると考えると、有り難いと思う。
少なくとも質問コーナーが始まる前はそう思っていた…。
質問コーナーとなった。
浜頓別町の、三十代くらいの男性職員の方が、会場内の手を挙げた方を当てる方式だ。
恐らく、当てられる人は予め決められており、当たり障りの無い質問が来るだろう。
例えば「休みの日は何していますか?」とか「好きな食べ物はなんですか?」とか「どうしたらプロに入れますか?とか」。
職員の方は、まず最前列の小学校高学年くらいの男の子を当てた。
「はい、そこの男の子、質問して下さい」
マイクが渡された。
「あのー、僕は将来、女性アナウンサーと結婚したいのですが、プロ野球選手になると、女性アナウンサーと知り合う機会はあるんですか?」
いきなりかい。
稲本投手がマイクを持って答えた。
「ほとんどないですね。
普段球場に来るのは、むさ苦しい男性記者ばかりです。
スター選手になればオフのテレビ番組とかに呼ばれて、知り合う機会があるみたいですが…。高橋はあるか?」
いきなり僕に振ってきた。
「え、いや、その、たまにあります」
「たまにあるんか。
今度合コンを設定してくれ」
あれ?、稲本投手は結婚していたのでは?
浜頓別町職員の方は、苦笑しながら、次に小学校低学年の男の子を当てた。
純真な目をした、坊主頭の子供だ。
少年野球をやっているのかもしれない。
きっと野球に関する質問が来るだろう。
「契約金は何に使ったのですか?」
おい、司会者。
どうなってんじゃ。
「僕は契約金が振り込まれてすぐに、引き出して天文館にいきました」と稲本投手。
天文館と聞くと、天体観測とかの高尚な趣味と思われるかもしれない。
(天文館をご存じない方は、各自でググって下さい)
「天文館では何をしたのですか?」
おい、それを聞いてはダメだ。
「それはもちろん、大人の店に行きました。そこでは…」
その先は言わせねぇよ。
僕は稲本投手の話を遮った。
「ぼ、僕は妹の学費を払い、残りは貯金しました」
「全部じゃないだろう。
その一部を握りしめて、ミナミに行って…」
アンタと一緒にしないでくれ。
「はい、次の質問にいきましょうね」
僕は町の職員の替わりに言った。
次は高校生くらいの純朴そうな女の子だ。
おさげが良く似合った、可愛らしい子だ。
「ファンの方と付き合った事はありますか?」
おーい、職員。
そろそろ止めてくれ。
「そりゃもちろん。
2軍にいるとファンとの距離も近いので、これまで◯◯人くらいと…」
首をしめてやろうか。
「あ、ありません。
僕らは野球に集中しているので、一切ありません」
僕は慌てて言った。
「え?、でもこの間谷口が言っていたけど、入団1年目の時に…」
谷口。
あれ程、他の人には言うなと言ったのに…。
「はい、次の質問にいきましょう」
慌てて僕は稲本投手の話を遮った。
どこで結衣の耳に入るか、わからない。やばいやばい。
「そ、それでは次の質問に移ります。前から3列目の帽子を被った男性の方、お願いします」
次は50歳くらいの男性が当てられた。
「どんな車に乗っているんですか?」
ようやく普通の質問が来た。
「僕は国産の〇〇です。
いつかポルシェに乗るのが夢です」
僕は無難に答えた。
「僕は車に乗るというよりも、乗せられる方ですね。
後輩の口車に」
稲本投手はそのように答え、面白いことを言ったと思ったのかドヤ顔をしている。
だが全然、面白くない。
会場に急に冷たい空気が流れた。
もちろん空調の故障ではない。
「趣味は何ですか」
「そうですね。僕は子どもと遊ぶことです」
先に僕が答えた。
「あれ?、手元の選手名鑑には妹とお医者さんごっこになっていますが…」と司会者。
そこ、余計な事を言わない。
それは三田村が知り合いの記者に言って書かせたもので…、まさかあいつこそ、妹とお医者さんごっこをしているのでは無いだろうな。
それなら殺す。
「稲本投手の趣味は何ですか?」
司会者が聞いた。
「僕ですか?、僕の趣味は…、ちょっとここでは言えません…」
稲本投手は言葉を濁した。
稲本投手の趣味は、ギターを弾いたり、絵を書くことである。
別に人に言えない趣味では無いと思うが、聞かせて欲しいとか、見せてほしいと言われるのが嫌なのだろう。
でもきっと会場の方々には、稲本投手のこれまでの発言から、言えないような趣味と思われただろう。
例えば〇〇クラブに行くとか、△△活するとか…。
「フリーエージェントの資格を取ったら、どこのチームに行きたいですか?」
次の質問は、20代くらいのチャラそうな若い男性だったが、質問内容は無難だった。
「僕はまだ資格を取るまで、時間がありますが、現時点では札幌ホワイトベアーズで引退したいと思っています」
僕が無難に答えると、会場は拍手に包まれた。
「僕は1番多く金をくれるチームですね」と稲本投手。
まあそれが本音かも知れないですが、もう少しオブラートに包んた方が…。
「嫌いなコーチや選手はいますか?」
「いえ、札幌ホワイトベアーズの首脳陣も選手も個性的な人が多いですが、和気あいあいとやっていて雰囲気はとても良いです」
「本当は?」と稲本投手。
「本当です」
「でもこの間、〇〇コーチは苦手って言っていなかったっけ?」
「言っていないです」
火のない所に煙を立てないで欲しい。
稲本投手にも困ったものだ。
次は20代くらいの若い女性が指名された。
なかなか愛らしい顔つきの女性だ。
「この小説がマンネリ化していることについて、対策はありますか。
また作者に対して言いたい事はありますか?」
顔に似合わず辛辣な質問だ。
「マンネリ化は作者の能力、ネタ不足じゃないですかね。
あいつ、オールスター後に一度話を終わらせようとしたんですよ。
モチベーション低下が何とかと言い訳していたけど…」
「俺なんてモブキャラとしてちょこっとしか出してもらえないのに、こんな所まで引っ張りだされて…。
もっと俺の活躍を描いてほしいです」
「何か最後はというか、最初から最後までグダグダになってしまいましたが、時間になりましたので、この辺で締めたいと思います。
稲本投手、高橋選手ありがとうございました」
僕らは立ち上がり、会場の皆様に一礼して、舞台袖に下がった。
このトークショーは楽しんでいただけたのだろうか。
僕は首を捻りながら、控室に戻った。
……………………………………………………………
(作者より)
本日は失礼しました。
明日は更新できるように努めますm(_ _)m
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