第305話 スランプの解消法

 熊本ファイアーズとの3連戦は初戦を勝って、勝率を5割に戻したが、その後の2試合に連敗し、また借金生活に戻ってしまった。

 ちなみにどちらの試合も4打数1安打、いずれもシングルヒットとあまり目立った活躍はできなかった。

 エラーもしなかったが、盗塁は一つ決めた。

 

 今シーズンはここまで19試合に出場し、75打数19安打、打率.253、ホームラン0本、打点6、盗塁6(盗塁死2)。


 次は引き続きホームでの仙台ブルーリーブス戦。

 僕はサヨナラヒットを打った熊本ファイアーズ戦以来、好調とは言えないまでも、それなりに調子を維持していた。

 

 それに変わるように不調に陥ったのが谷口である。

 ヒーローインタビューを受けてから2試合、8打数ノーヒット。

 バッティングの内容もあまり良くなく、バッターボックスで迷いが見られる。

 谷口の今シーズンの成績は、18試合に出場し、67打数20安打、打率.299、ホームラン4本、打点10、犠打3。

 打率も3割を切ってしまった。

 

 谷口は一度スランプに陥ると、抜け出すのに時間がかかるタイプである。

 僕らのようにプロ入りして、8年も経つと、スランプは避けられないものだと割り切っているし、向き合い方もそれなりに分かっている。


 僕の場合は早出特打で良いイメージを頭に植え付けることで、スランプ脱出を図るが、谷口のそれは素振りである。

 一心不乱にバットを振り続けていると、無心になる瞬間があるそうだ。

 その境地に達すると、打席に入っても余計なことを考えなくなるので、自然にスランプを脱しているそうだ。

 残念ながら、僕には谷口の言うことが良くわからない。

 求道者のようなストイックな谷口らしい。


 仙台ブルーリーブスとの三連戦は1勝1敗で3戦目を迎えた。

 仙台ブルーリーブスは、昨シーズンは前半は調子が悪かったが、後半に調子を上げ、3位に滑り込んだ。

 今シーズンも3位に付けており、現在4位の札幌ホワイトベアーズとしてはここは勝ち越しておきたいところである。


 仙台ブルーリーブスの今日の先発は、岩城投手。

 今季がプロ入り2年目で、一昨年のドラフトで4球団競合の上、仙台ブルーリーブスに入団した。

 顔も僕ほどでは無いが、それなりにイケメンと言われており、叩き甲斐がある相手だ。


 さて戯言はここまでにして、今日のスタメンは以下のとおりである。


 1 高橋(ショート)

 2 谷口(レフト)

 3 道岡(サード)

 4 ダンカン(ファースト)

 5 下山(センター)

 6 ロイトン(セカンド)

 7 西野(ライト)

 8 上杉(キャッチャー)

 9 青村(ピッチャー)


 今日の先発は右のエースの青村投手。

 なおセカンドにはロイトン選手が入っている。

 ロイトン選手はユーティリティプレイヤーであり、外野も守れるし、内野はどこでも守れる。

 細身であるが、外国人選手に期待されるパワーもそれなりにある。


 最近調子を落としているとは言え、谷口はチームでは1番の打率を残しており、今日もスタメン出場である。

 是非、僕が塁に出たら盗塁を助ける空振りや、塁を進める送りバントをして、僕の引き立て役になって欲しい。


 試合が始まり、1回表は青村投手がランナーを1人出したものの、無失点で切り抜けた。

 その裏、僕はバッターボックスに向かった。


 投球練習をしている岩城投手は、確かに端正な顔立ちをしている。

 以前、泉州ブラックス時代に対戦した時は、10球以上粘ってフォアボールを選び、それをきっかけに崩した。

 今回も粘ってやろう。


 と思っていたら、あっさりとツーシーム2球で追い込まれた。

 決め球として、フォークを使うはずなので、それを意識してストレート、ツーシームをケアしようと思っていたら、3球目。

 スライダーが外角の良いところに決まった。

 全く手が出なかった…。

 僕はトボトボとベンチに戻った。


 次は不調の谷口であったが、初球のカットボールをアッサリと打ち上げて、レフトフライ。

 4球でツーアウトとなってしまった…。


 3番の道岡選手はフルカウントまで粘ったが、フォークを振らされ、空振り三振。

 うーん、これは苦戦するかも。


 試合は投手戦となり、早くも4回表を迎えた。

 

 

 

 


  

 

 

 


 

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る