第176話 首位攻防、第二ラウンド
翌日の中京パールス戦は、若きエース、星投手の前に泉州ブラックス打線が沈黙し、この2連戦は1勝1敗の痛み分けとなった。
泉州ブラックスとしては、連敗すると中京パールスとゲーム差無しになるところだったので、一つ勝っただけでも御の字であった。
暑かった8月が終わり、9月に入ると、ペナントレースも佳境となる。
我が泉州ブラックスは、120試合を消化して、首位の東京チャリオッツと1.5ゲーム差の2位につけ、3位の中京との差は4ゲーム差に開いていた。
僕はと言うと、スタメンで出たり出なかったり。
あまり昨年と立場は変わっていない。
ここまでの成績は、57試合に出場し、80打数19安打、打率.238、ホームラン2本、打点11、盗塁11(盗塁死5)。
昨年の最終成績が73試合で打率.243、ホームラン1本、打点12、盗塁13 (失敗6)。
数字の上では昨年とほぼ変わらない。
とは言え、ホームランだけでなく、三塁打、二塁打の数も既に昨年を上回っているので、長打力はついてきたかもしれない。
(三塁打は1本→2本、二塁打は4本→7本)
シーズン終盤に向けて、個人成績も伸ばしていきたいところだ。
もっとも今年は二軍落ちした期間もあったので、試合数は昨年を上回るのは困難だろう。
さて今週末は、泉州ブラックスタジアムでの東京チャリオッツを迎えての首位攻防戦。
もしここで三連勝したら、首位奪還である。
だが初戦は東京チャリオッツの稲留投手の前に完封負けを喫してしまった。
(僕は出場機会はなかった)
これで2.5ゲーム差。
これ以上負けるわけにはいかない。
だから泉州ブラックスは、第二戦で満を持して、秘密兵器を2番セカンドでスタメン起用する決断をした。
ということで、僕は久しぶりに2番セカンドでフル出場し、4打数2安打だった。
2安打はいずれもシングルヒットであったが、後続が打ち、いずれもホームに帰ってきた。
試合は5対2で泉州ブラックスが制し、これで1勝1敗となった。
3試合目は首位争いに残るには、負けられない試合になる。
ここで勝ったら、首位とは0.5ゲーム差。
負けたら2.5ゲーム差に後退である。
今日の試合、僕は昨日に引き続き、2番セカンドでのスタメン出場を仰せつかった。
試合前練習でセカンドの守備位置から僕は空を見上げた。
灰色の雲が泉州ブラックスタジアムの上を覆いつつある。
天気予報は、曇のち雨である。
そうだ。
僕が2軍落ちのきっかけとなった試合も、試合前はこんな天気だった。
僕は外野でストレッチをしている、今日の先発の三ツ沢投手の方を見た。
あの日も先発は三ツ沢投手だった。
天気も先発投手もあの日と同じ。
僕はもう一度、天を見上げた。
今日の先発は次の通り
1 岸(センター)
2 高橋隆(セカンド)
3 水谷(サード)
4 岡村(ファースト)
5 デュラン(指名打者)
6 宮前(ライト)
7 伊勢原(ショート)
8 高台(キャッチャー)
9 山形(レフト)
ピッチャー 三ツ沢
トーマスは8月末に不調に陥った泉選手に変わり、一軍に昇格しているが、今日はベンチである。
きっと勝負どころで代打起用があるのだろう。
東京チャリオッツの先発は、今や左のエース格に成長した滝田投手。
相手に取って不足ない。
(相手は不足あるかもしれないが……)
初回、三ツ沢投手はいきなり角選手に3ランホームランを打たれた。
いきなり3点のビハインドだ。
相手投手が滝田投手であることを考えると痛い。
いや、痛すぎる。
一回裏、先頭バッターの岸選手は初級をセンター前に運んだ。
ノーアウト一塁。
僕はバッターボックスに入る前にベンチのサインを確認した。
サインはヒットエンドラン。
岸選手は俊足であり、僕はゴロを打つのが得意(単に打球が上がらないだけという説は無視する)なので、良い作戦ではないだろうか。
右打ち、右打ち。
僕は打席に入りながら、頭の中で呪文のように反芻した。
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