第388話 油断大敵!

「ひぇっ!」

 反射的に、裕太は身体をスッと横にずらす。

ものすごいスピードで、顏すれすれをすり抜け、風を切って、

矢は岩の方へと飛んで行く。

「な、だから言っただろ?

 ここからは…慎重にな」

そう言うと、ショーンはキッとした表情で、立ち止まる。

(それにしても、どこから攻撃してきているんだ?)

さすがの裕太も、一気に緊張した顔になる。

「なるべく…岩の陰に隠れろ」

ショーンは、裕太たちに向かって、声をかけた。


(ボクは、弱虫じゃないぞ!)

 裕太はムラムラと、負けん気が湧きおこる。

だが、あまりにも相手の動きが素早くて、ジュンペイでさえ

追いつくことが出来ない。

(いや、むしろ、隠れていないと…やられてしまう)

手も足も出ないとは、このことだ。

そんな不甲斐ない自分自身に、悔しい…と裕太は歯ぎしりをする。

 だがジュンペイは、まるで鬼ごっこをしているように、どうも

スリルを感じているらしい。

(一体、どういう神経をしているんだ?)

サバイバルゲームのように、上手に岩の陰に隠れては、ひょいっと

相手の攻撃をかわす。

「惜しいなぁ~

 ちょっと、オジサン!本気を出しているの?」

しかも相手をからかう命知らずだ。

「おい、やめろ。

 相手を挑発するな!」

さすがに裕太は、業を煮やして、ジュンペイの頭を押さえつけた。 


「これだと、ラチがあかないなぁ」

 腕組みをして、考え込んでいたショーンは、ついに動き出す。

「ここは、別のルートを探そう」

子供がいることから、あくまでも平和的にと思ったらしく、裕太たちに

声をかけた。

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