第96話 戦士の休息?

 ショーンが自分の寝ぐらに帰るのを、離れた所で

マリさんが見ていたのか…

裕太たちに向かって

「さぁ、あなたたち…今晩はどうするの?」

と、声をかけてくれた。

「えっ、もうそんな時間?」

暗いので、時間の感覚が麻痺している。

ようやく助けられて、気持ちが高揚しているのか、疲れなど

感じない。

「そうだよ!」

ジュンペイが笑う。

 今日は、もう遅い。

「疲れただろ?」

ミナトが言うと…裕太は頭をかしげた。

「えっ、ボクたちは…」

そう言いながらも、突然お腹がグゥ~と鳴る。

「やっぱり!」

サキアも笑う。


 安心した途端、気が緩んで、空腹を感じたのだろう。

そういえば…朝ごはんしか、食べてはいない。

「そうだ!これからご飯…というところで、ボクたち、

 誘拐されたんだった!」

思いだしたように、ジュンペイが言う。

「あっ、そうだよぉ」

とんでもないよな、と裕太も悔しそうにする。

「そういえば…」

何か、忘れてはいないか?

目を見合わせる。

「あ~っ!ルームサービス!」

いきなり大きな声で言うと…

さらにグゥ~

裕太とジュンペイのお腹の音が、コラボした。

「ホラホラァ~」

ミナトも笑う。

「だけど…もう、夜よ」

マリさんも笑う。

「え~っ、食べそこねた!」

 本日で何が悔しいって、これが1番悔しいのかもしれない。

2人にとっては、食べることこそ、何よりの楽しみだったのだ。


「ミスターも、心配してたわよ」

ニヤリとサキアも笑う。

そういえば…と裕太がキョロキョロと探す。

「ミスターは?」

突然、自分たちがいなくなったから…きっと探したんだろうなぁ~

ふいに、裕太は思い出した。

「今ね、お使いを頼んでいるの」

最近は、サキアの秘書のようなことを、しているらしい。

「え~」

残念だなぁ~

「さんざん、心配かけたもんねぇ」

裕太がつぶやくと、

「大丈夫!

 あの子は、そんなことぐらいで、怒るような人じゃあないわ」

なぜだかサキアは、キッパリとそう言いきった。

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