第95話 あわてない、あわてない、ひと休み、ひと休み!

 ゴソゴソと、ジュンペイがポケットを探ると

「もしかして、これ?」

手のひらを突き出す。

そこには、ちょっと珍しい素材の笛が(土笛?)乗っている。

「そう、それ!」

ショーンは大きくうなづいた。

裕太はなに?という顔をして、ジュンペイを見ている。

それには気付く様子がなく、

「わかった」とうなづくと、

あらためてショーンは、裕太の方を見ると

「君には、これを預けるよ」

と言うが早いか、ポーンと白い物体を投げつけた。

「えっ?」

白い放物線が、まっすぐに裕太に向かうと、裕太はあわてて

その方向へと走って行く。

「なに?」

両手を広げ、上を向いたまま、どこへ行けばいいのかと、

キョロキョロとする。

「タマゴだ!」

ジュンペイが叫ぶと

「タマゴ?それは大変だ!」

落としてはならない…と裕太はあわてた。

 ヒュルヒュルと、それは上から落ちてくる。

何とかその物体を、受け止めようと、裕太は大きく目を見開く。

もしかしたら…確かにそうかもしれない。

卵にしては…ずいぶん、デッカイなぁ~

訳もわからず、とにかく手を伸ばす。


 ストン!

その丸い物体は、スッポリと裕太の腕の中に、何とかおさまると

「ユウタ、ナイスキャッチ!」

ジュンペイは、腕を突き上げた。

「やっぱり、そうかぁ」

ジュンペイは、裕太に近付く。

「これはきっと、君たちの役に立つはずだ。

 もしも、何か困ったことになったら…

 その笛で、呼んでくれ」

ショーンは、ジュンペイの方を向くと

「頼んだぞ」

背中の翼を大きく広げた。


「ねぇ、それって、ホンモノ?」

 今さらなのだけど、裕太が物珍しそうに見るので

「そうだよ」

羽根を大きく動かすと、フワッと土ぼこりが舞い上がる。

「君たちも、トオに行くんだろ?

 その時には、呼んでくれ」

そう言うと、身体を宙に浮かせた。


 白い翼が大きく揺れると、あっという間に天井を舞う。

「それを、なくすなよぉ」

そう言うと、あっという間に、その姿は暗闇に溶け込んで

行った。

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