第142話 小休止

「ここはもともと、聖域なんだ。

 本来ならばボクたちも、立ち入ってはいけない場所なんだよ」

 キヨラさんとは洞窟の手前で、別れた。

入り口で、スズカさんとも別れると、

「さぁ、もう少し行った所で、ミアと合流するぞ」

腕時計を見ると、ミナトは裕太たちに告げた。

「ミナトって…ミアさんと、付き合っているの?」

ニヤニヤしながら、ジュンペイが聞く。

「はっ?何を言っているんだ?」

大人をからかうもんじゃない、とミナトはわざと、怖い顔を

してみせた。

「ただの幼なじみだ!

 そんな…色恋沙汰など、あるわけがない!」

ムッとした顔で、キッパリとした口調で言いきる。

「ふぅーん」

だがまだジュンペイは、ミナトの顏を見ながら、ニヤニヤしている。

そして「あっ」と言うと、

「そっかぁ~じゃあ、キヨラさんなんだ!」

いきなりポンと、ジュンペイは膝を叩く。


「えっ?」

「おい」

裕太が何気なく、ミナトの顏を見ると、何だかおかしい。

まさか…図星だったのか?

ミナトの声が、裏返る。

「な、何を言う!」

不自然に、語尾が揺らいでいる。

「何って…ミナトの様子が、おかしいんだもん!」

ケラケラ笑いながら、ジュンペイはミナトを見る。

「なんだとぉ~」

呼び捨てにされたことも、気付かない様子で、面白いくらいに

取り乱して、ジュンペイに向かって手を振り上げる。

(あららぁ~)

ここは、そっとしてあげよう…

気の毒に思った裕太は、

「おい」

ジュンペイをミナトから引きはがした。

「ホント、おまえって~

 加減というものを、知らないんだなぁ」

呆れる裕太に、

「はっ?なんで?」

ジュンペイはキョトンとした。

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