第141話 目に見えない境界線

「感心すること、ありません。

 野蛮なだけです」

 ついにスズカさんが、ジュンペイに切れた。

ピシャリと言い放つと、

「これだから、子供は嫌いよ」

裕太たちをにらみつけた。

「まぁ~いいじゃないのぉ」

だって、男の子なんだもんね!

のどかな顔をして、キヨラさんが彼女をたしなめる。

「でも…」

まだ言い足りなさそうな顔をする。

スズカさんの背中を押して、

「いいから!

 早くあの子たちを案内してあげて」

無理やり丸め込む。

「じゃ、私はここで」

キヨラさんは、クルリときびすを返した。


「えぇ~一緒に、行かないんですかぁ?」

裕太は残念そうに、その姿に声をかける。

キヨラさんは振り返ると

「ごめんなさいね!

 私は…ここから先は、出たらいけないのよ」

申し訳なさそうな顔をする。

「えっ、どうして?」

ビクンとジュンペイが反応すると、ジロリと見ていた

スズカさんが

「そういう決まりなんです!」

ピシリと言いきった。

「でも…」

背中を向けるキヨラさんと、スズカさんを見比べる。

「スズカさんは?」

「私は、いいんです」

「なんで?」

「だから…決まりなんです」

「え~」

さっぱり訳がわからない。

(キヨラさんがダメで、スズカさんは大丈夫?

 それって…違いは、なんなんだ?)

 だが、それ以上は、教えてくれそうな気がしない…

彼女のけんもほろろな態度に、ジュンペイは不満そうに

顏をしかめているけれど…

「ごめんなさいねぇ。色々とあるのよ」

それって宗教上の問題か?

その色々が何かは、教えてはくれなかった。


 再びキヨラさんが、ペコリと頭を下げる。

「こらっ、困らせるんじゃない」

ミナトが、ジュンペイの頭をぐっと押さえると

「申し訳ありません」

裕太たちに、頭を下げさせて、ようやくその話を打ち切った。

「いいんですよぉ」

そう微笑むキヨラさんに、ミナトの顏が、なぜか少し照れくさそうに

緩んでいた…


 

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