サキアの休日…41

(ミナトって、案外鈍いからなぁ)

 普段は穏やかで、周りの人に対して、気遣いが出来るたち

なのに…

こと、彼は自分に関しては、からっきし気付かないのだ。

(この人…あの日のことを、覚えているのだろうか?)

 幼い頃のあの日…二人で、竜のお姫様に会いに行こう…と、

大人の目を盗んで、こっそり会いに来たことを、彼は忘れた

のだろうか?


 サキアはキヨラに近づくと、

「じゃあ、頑張ってね」

こそっとささやいた。

(これが、私が出来る、あなたへの最後のプレゼントよ!)

あなたには、普通の女の子としての幸せを、味わって欲しい…

サキアは、天井から見える、月を見あげて、こっそりと願い事を

した。

(龍神様…せめてこのささやかな願いを、聞き入れてください)

そう心の中で祈っていた。



「あの後…本当に、姿を消すなんて」

 トオに向かう道の真ん中で、ミナトはいきなり、通せんぼをする

ように、サキアの前に立ちはだかる。

「あら!せっかく竜のお姫様と、二人きりにしてあげたのに」

わざと焦らす様な顔をする。

(こんなことを言うということは…キヨラは、何も言っていないようね)

ホント、世話の焼ける人たちだ。

サキアは思わず、ため息をもらす。

「違うんだ!

 キヨラは、ボクに教えてくれたんだ。

 サキアがここを出て、トオへ挑むつもりなんだって」

 おまえ、死にに行くつもりなのか?

ミナトは、サキアの腕をつかもうとした。


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