サキアの休日…40

「本当はね、顔を見たら、引き返すつもりだったのよ」

 そうサキアが言った時…

「竜のお姫様が、どんな人なのか、見てみたかったんだ」

背後から、ミナトの声が聞こえた。


「えっ」

 キヨラは思わず、絶句する。

なぜなら、ミナトには内緒で会いたい…

と、サキアに言われていたからだ。

 だが、サキアは全く驚く様子もなく、

「あら、やっと来たわね」

平然とした顔で、振り返る。

「えっ…」

キヨラはすぐに、サキアの企みに気付く。


「えっ、なになに?」

 だがミナトは、苦笑いをするキヨラに気が付くと、こちらもまだ…

状況を飲み込めないでいる。

「なんで、キヨラが…ここにいるの?」

てっきり、サキアと二人きりだ、と思っていたので…

さて、どうやって、彼女を送り出そうか…などと、あれこれと考え

ながら、やって来たのだ。

しかし…

サキアは嬉しそうに立ち上がると、にぃっと笑う。

「やっと、待ち人来る、ね!

 お邪魔虫は、これで退散するわよ」

お別れ会の主役となるべく本人が、まさか二人をハメるとは。

「はぁっ?」

置いてきぼりを食らったような、形になったミナトは、

「えっ、なんだよぉ。

 やっと今、来たというのに」

不満そうに、口をとがらせた。


 ミナトは、まだ気づいてはいない。

キヨラが落ち着きなく、目線をキョロキョロさせている、と言うことを…

それを、サキアは目で確かめると、

「じゃあ、とにかくちゃんと、話をしてよ!」

頼んだわよ、とポンとミナトの背中を叩いて、その場を離れた。

(まかせちゃって、大丈夫かなぁ?)

一瞬、不安に思うけれど…

(まぁ、キヨラもいるし、大丈夫でしょ)

思いきりよく、背中を向けた。

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